損保ジャパンなど、衛星の故障に備え非常用の通信手段を宇宙関連企業に提供へ
保険大手の損害保険ジャパンと、同社傘下の「SOMPOリスクマネジメント」は、人工衛星用の通信機の開発を手がける豪州の宇宙新興企業「ANT61」と協力し、衛星の故障に備えた非常用の通信手段を日本の宇宙関連企業へ提供する。先月には、損保ジャパンらが日本企業への紹介や橋渡しを担う契約を締結した。 【図】日本人宇宙飛行士の月面着陸のイメージ
2021年に設立されたANT61は、衛星の電源がなくても、独自の電池で数日間動くバックアップ用の通信機器「ビーコン」を開発している。衛星の通信機能が喪失した場合、小型の通信機をバックアップとして使うことができるという。今後、ビーコンを搭載した衛星の宇宙空間での動作実証を行う予定だ。
損保ジャパンなどによると、打ち上げ後に衛星が故障すると、修理が難しく、通信が一切できなくなることもある。特に近年、打ち上げ数が増えている高度数百キロ・メートルの低軌道上の小型衛星は、運用初期に通信を喪失する事例が頻発している。衛星の状態は、衛星から地上に送信されるデータで把握しており、通信機能が喪失すれば、故障原因を究明するデータも取得できなくなる。後続機での対策にも生かせなくなるという。
ANT61の開発したビーコンを使えば、通信機能や衛星の状態、姿勢やコンピューターが正常に動作しているかなどがわかる。衛星本体の通信機能が失われても、どの部位で故障が起きたかなどのデータを送信できる。故障が発生した前後の衛星の状態が、より正確に把握できるため、復旧させるために適切な手立てを講じることにもつながるという。衛星のソフトウェアを書き換えて修理を試みることも可能だ。
損保ジャパンとSOMPOリスクマネジメントは、昨年11月から宇宙ビジネスに参入する企業を対象に技術面での相談や、リスクを抽出する支援サービスを提供している。両社は先月、通信機能喪失のリスクに対応した日本でのサービスの提供に向け、ANT61と契約を締結した。損保ジャパンなどは、ビーコン搭載を検討する国内企業との橋渡しや潜在的な需要の調査を担うという。
損保ジャパン・宇宙産業開発課の河村知浩チーフは「軌道上で衛星を運用するリスクを少しでも低く減らすことにつなげたい」と話した。