なぜブルガリがグランツーリスモと組んだのか? マシンをデザインした当事者に意図を聞く【新型車デザイン探訪】
腕時計にインスパイアされたデザイン
ファビオは今回のプロジェクトを「今のカーデザインの主流とは違うオリジナリティの高いデザインを創造するユニークな機会だった」と振り返る。なにしろ腕時計から発想してクルマをデザインするというのは、世にも希なことだ。1998年に発売され、今も高い人気を誇る”ブルガリ・アルミニウム”が、すべての出発点になった 「幾何学的なシェイプを持つ”ブルガリ・アルミニウム”のデザインはとてもピュアであり、アルミとチタン、ラバーという素材の組み合わせも革新的だ」とファビオ。しかもハイエンドの商品ではなく、「若々しくファンなデザインで、高級を民主化する存在でもある。ブルガリのような高級ブランドがそれをやるとは、誰も予想していなかった」 「そこで我々は”ブルガリ・アルミニウム”と同じデザイン言語で、シンプルかつ幾何学的なフォルムを持つライトウェイトスポーツをデザインしようと考えた」。あえてスーパーカーを狙わなかったのは、”ブルガリ・アルミニウム”の位置付けを考えてのことだろう。 デザイン言語としてファビオが挙げるのは、幾何学的な立体が互いに噛み合ったピュアでクリーンなシェイプ、奇を衒わない典型的なプロポーション、素材や色の使い方など。「ボディのメインはアルミで、バンパーなどのテクニカルな部位はラバー。これはブルガリの腕時計のケース本体とベゼルの関係と同じだ」 インテリアも同様だ。コクピットの前方奥、窓下のラインは真上から見ると円弧を描き、腕時計の“円”を想起させる。ダッシュボードはアルミ色とブラックを組み合わせた幾何学的な円柱形状で、そこに円形のメーターやベントグリルが並ぶ。 ブルガリのデザインセンターではスティリアーニ氏が、グランツーリスモ限定モデルの腕時計のデザインを進めていた。彼がキーカラーとしたのはイエローとアンスラサイト(チャコールグレー)。結果的にアンスラサイトの文字盤にイエローの文字/目盛り、イエローの文字盤にブラックの文字/目盛りという2つのバージョンの腕時計が誕生したわけだが、バーチャルカーではその両方を大小3つのメーターに活かした。「メーターはまさに腕時計と同じイメージでデザインした」とファビオは告げている。