「お金を増やすことだけを目的とした投資」に抜け落ちた“重要な視点”
投資家の負う未来への責任
いま、多くの人が暮らす社会は、こうした資本主義経済の仕組みの上に成り立っている。仮に(国家や個人でなく)「会社」を中心に資本主義経済を見るとすると、その大元は投資が生み出したものといっても過言ではない。 資本主義社会を自動車にたとえるなら、会社が車を動かすエンジンであり、投資はエンジンを動かすガソリンのような存在だ。そうした意味で、投資と会社は、経済を推進する動力であり、その活動の結果が社会のありかたを左右する。 投資家が投資の先にある社会に目を向けなくてはならない理由がそこにある。投資家は意図しないうちに、未来に対する責任を負っているのだ。 そして、もう1つ大事なことがある。投資のリターンがどこから生まれているかということだ。 投資のリターンは、株式の場合、直接的には配当金や「買ったときの値段よりも値上がりした高い値段で売ること」によってもたらされる。しかし、その株価は、基本的に会社が生み出す「利益に連動」する。その会社の利益は、会社の事業、その事業に一所懸命取り組む社員や取引先、顧客さらには社会や自然環境との関わりのなかから生み出される。社員の給料や取引先への支払い、国や地方自治体への納税もまた、事業を通じて生み出した「付加価値の分配」にほかならない。 こうしたことに気づいたときに忘れてはならないことがある。投資のリターンは、投資先に関わるすべての人によってもたらされているということだ。そして、この循環が続いていくためには、ただお金を増やすことだけを目的にする投資ではなく、投資するお金がいかに社会をつくっているかという視点が必要となる。 ---------- プロフィール 鎌田恭幸(かまた・やすゆき) 鎌倉投信株式会社 代表取締役社長。 1965年島根生まれ。 35年にわたり年金などの資産運用に携わる。 大学卒業後、三井信託銀行(現:三井住友信託銀行)に入行。バークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行(現:ブラックロック・ジャパン)にて副社長を務める。 2008年11月に鎌倉投信株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。 2010年、主として上場企業の株式を投資対象とした公募型の投資信託「結い2101(ゆいにいいちぜろいち)」の運用・販売を開始。2021年、これからの社会を創発する可能性を秘めたスタートアップを支援する私募型の有限責任投資事業組合「創発の莟」の運用を開始。 独自の視点で「いい会社」に投資し、その発展・成長を応援することを通じて「投資家の資産形成と社会の持続的発展の実現」をめざしている。 ----------
鎌田 恭幸(鎌倉投信株式会社代表取締役社長)