「お金を増やすことだけを目的とした投資」に抜け落ちた“重要な視点”
リターンとは何か
投資家として会社に出資をして株式を所有することは、その会社の株主になるということだ。投資をしたら、当然見返りがほしい。では、投資家である株主の「利益(リターン)」はどのようにして生まれるのだろうか。 結論からいえば、株主のリターンの大元は、「会社の事業から生み出される利益」だ。会社は、株主から出資してもらったお金(資本金)を元手に、事業を行うために必要な設備や資産を購入する。**それらを活用して商品やサービスをつくり、それらを販売して売上を上げる(**株主からの調達に加えて、銀行借入や社債などで資金を調達することも一般的)。 そこから製造原価や人件費を含めた諸経費を差し引いたものが「営業利益」だ。さらに、営業利益から借入にかかる金利、税金や役員賞与などを差し引いた残りが株主の利益となる(図5)。その利益から株主に対して配当金が払われ、残ったお金は「内部留保(剰余金)」として会社の資本金、つまり株主の資産となる。株主が保有する資産を「株主資本」という。 つまり、株主のリターンは、基本的にこうして得られる配当金と株主資本の増加額であり、その源泉は会社が生む利益なのだ(図6)。 配当金を分配した後に、さらに利益が余っていたら、株主が出資した資本金(株主資本)に上乗せされて株主の資産は増える。株主資本が増えれば、株式の値段を表す株価も上昇する。もちろん会社が赤字となれば、配当も、株主のお金である株主資本も減る。 この関係性は、友人の会社であっても、トヨタ自動車やソニー、アップルやマイクロソフトのように世界を代表する大企業であっても基本的に同じだ。これが投資の原風景である。
株式会社は「大きな夢」を追う仕組み
株式投資は元本の保証はないが、こうして会社が生む利益しだいでは、大きなリターンが期待できる。銀行預金や債券などと比較するとリスクもあるが、そのぶん期待できるリターンも高い。 しかし、夢のある事業だからといってすべてが成功するわけではない。事業が失敗したら出資したお金は水の泡になることもある。出資金がゼロになるだけならいいが、それ以上の負債を負わされたらたまったものではない。そこで、なるべく多くの人が出資し合い、出資した金額以上の金銭的責任は負わない仕組みが考えられた。それが「株式会社」だ。 そこで、世界中の多くの事業家は、この株式会社の仕組みを使って投資家から資金を集め、設備を増やし、雇用を生み、大量にモノを生産したり、新たなモノやサービスを生み出したりして世界中で売ってまわる。会社の売上が増えると、取引先や社員の収入も増え、消費も拡大する。この拡大再生産の循環が資本主義経済の基本的な姿だ。