「モスキート音」で安全な公園を取り戻す 東京・足立区が試験導入した秘策
今年2月、東京都荒川区は全区立公園に防犯カメラの設置を決めました。そのことはニュースでも大きく報じられました。公園内に防犯カメラを設置することは、治安対策が目的です。近年、駅前や商店街・繁華街いった雑踏では防犯カメラの設置が当たり前になっています。そうした風潮から、荒川区のみならず、ほかの自治体でも公園における防犯体制を強化しているのが目立ちます。特に、率先して公園の防犯対策を強化してきたのが足立区です。
街の美化・緑化運動で治安が改善
足立区は区内の治安を向上させるため、2008(平成20)年から「ビューティフル・ウィンドウズ運動」に取り組んでいます。これは、米ニューヨーク市が取り組んだ「割れた窓ガラスを放置するような軽微な環境悪化から地域環境は乱れていく。そのためにも、小さな社会の乱れを放置せずに環境改善していく」というブロークンウィンドウズ運動に範を取ったものです。 足立区のビューティフル・ウィンドウズ運動では、タバコのポイ捨てや放置自転車を厳しく取り締まっています。そうした違法行為を減らそうとする一方で、駅前広場や商店街に花壇を設置するなどして、街の緑化や美化を推進しています。 これらの運動の効果は、数字にも表れています。警視庁が発表している足立区の刑法犯発生件数を見ると、2014年は7560件、2015年は6939件と年々減少しているのです。2015年でみると、新宿区の7941件、世田谷区の7832件より少なくなっています。足立区の治安は、劇的に改善しているのです。
遊具破損の被害に悩む北鹿浜公園
足立区は公園でも治安改善に取り組んでいます。2005年ごろ、足立区の公園では深夜に地域の中高生がたむろし、近隣住民から苦情が相次いたのです。 「それらの対策として、足立区は2007年から民間事業者に委託して公園のパトロールを強化しました。それでも、2008年に区役所に寄せられた公園関連の苦情は、約1800件にのぼります。そのうちの3割が、利用者のマナーに関する内容でした。特に『中高生が夜間に公園で騒いだり、たむろしていたりして恐怖を感じた。安心して利用できないから、なんとかしてほしい』という声が多かったのです」(足立区都市建設部公園管理課) 足立区の公園では、遊具や公園事務所が破壊される事態がたびたび発生していました。それらの被害総額は2008年度で70万円。特に被害が目立ったのは、北鹿浜(きたしかはま)公園でした。 同公園にはブランコや滑り台、砂場といった子供たちの遊び場、野球やサッカーをプレーできる球技場、ミニ列車やゴーカートに乗れる交通広場などがあります。昼間は多くの人でにぎわう北鹿浜公園ですが、周囲が住宅街ということもあって夜間の利用者はいません。また、人通りも少なく、公園内は人目につきにくい場所になっています。 そうした立地から、夜間に公園事務所の窓ガラスが割られたり、自販機やトイレが破壊されたりすることが多くなっていたのです。