「モスキート音」で安全な公園を取り戻す 東京・足立区が試験導入した秘策
若者だけ聴こえる「モスキート音」
区民の声を受けて、足立区は夜間の公園パトロールを強化しました。それでもたむろする中高生は見回りの時間帯を避けたり、パトロール隊の注意を無視したりするなど、効果は上がらなかったのです。 そこで足立区は公園の防犯対策として秘策を打ち出します。それが「モスキート音」の出る機器の設置でした。 「夜間の公園の防犯対策に頭を悩ませていたとき、パトロールを委託している業者から『10代・20代の若者だけが聴こえる高周波音を出す、モスキート音の機器を設置してみてはどうか?』という提案がありました。導入にあたって、日本音響研究所にもヒアリングを実施し、健康被害は出ないか? どのぐらいの出力にすれば公園近隣の家々に迷惑にならないか? を検討しました。さらに、近隣町会に説明して理解を求め、公園内にもモスキート音を流す機器の設置を知らせる看板も掲出するなど利用者にも周知することにしました。モスキート音を流すのは夜間の治安対策ですので、23時から翌朝4時までの限定運用というルールも定めました」(同)
試験運用の後も目立った被害はなし
モスキート音の機器を設置したことは、たちまち話題になって多くのマスコミが詰めかけました。テレビや新聞で大々的に取り上げられたことで、北鹿浜公園には区民や近隣区からも見学者が訪れるようになりました。さらに、警察による巡回も増加したのです。 「モスキート音の試験運用は約1年間でしたが、終了後も目立った被害は出ていません。モスキート音の機器を設置したことで北鹿浜公園には多くの人が来るようになり、注目が集まるようになりました。それが、中高生がたむろしにくい環境を生み出したと分析しています。モスキート音の機器による効果もあったと思いますが、なによりも区民の関心が高まったといった二次的効果が治安改善に大きな効果を発揮したと思います」(同) 現在、試験運用を終了し、公園内にモスキート音を流していません。足立区はパトロールを強化することを公園の治安対策の第一としています。それでも破壊行為・迷惑行為が著しい場合は、条例にもとづいてモスキート音の機器を再設置することもあるとしています。 (小川裕夫=フリーランスライター)