6年で60店も閉店したのに、むしろ売上高は伸びている…「ブックオフ」に起きている大変化を解説する
■変化し続けて、成功してきた企業たち 変化し続ける産業に合わせて、業態転換を続ける。皆さんもぜひ身の回りで探してほしい。いくらでも事例は見つかるはずである。ここでは典型的なものを3つピックアップしよう。 ① ダイソー(大創産業)。100円ショップでおなじみであるが、同社がもはや100円ショップにだけ頼っているわけではないことは、まだあまり知られていないかもしれない。この物価高の中で、同社も業態転換を進めている。300円均一店であるTHREEPPY(スリーピー)や、さらにハイエンドなStandard Productsなどの新ブランドを立ち上げ、変わりゆく時代情勢に応じた事業を構築しようとしている。 ② ベイシアグループ。もともとスーパーマーケットのベイシアをスタートとしているが、カインズ、ワークマンと郊外在住の顧客ニーズに合わせた新業態にシフトし、現在は郊外で進むショッピングモール化の流れを受けてカインズモールを構築している。一つの業態に留まらないことで、市場機会を確かに獲得し続けてきた。 ③ ゼンショーホールディングス。「すき家」を中核とするグループだが、2001年のBSE問題に際して、ファミリーレストラン「ココス」に資源をシフトしたり、「なか卯」「華屋与兵衛」などのチェーンを買収するなど多角化を図った。2002年からスタートさせた「はま寿司」も、スシローやくら寿司に続く回転ずしの有力チェーンとなっている。消費者の気まぐれな外食ニーズに、これでもかというほどに食らいついて変化を続けてきたグループである。 こうした種を撒いておくことが、事業環境の変化のための準備として大切であることをよくよく理解しているのである。 既存事業が衰退する前に、新しい事業を構築し一時的優位を連続的に構築していく。本が売れなくなっている時代に、中古本業者であったブックオフが、閉店しながら躍進している……これらの事実は、「一時的優位の連続」というセオリーに沿った、筋の通ったストーリーなのである。 ---------- 中川 功一(なかがわ・こういち) 経営学者 1982年生まれ。2004年東京大学経済学部卒業。2008年東京大学大学院経済学研究科修了(2009年、経済学博士)。駒澤大学経営学部講師、大阪大学大学院経済学研究科講師、同准教授を経て、2021年に「やさしいビジネススクール」を設立、学長に就任。著書に『感染症時代の経営学』『ど素人でもわかる経営学の本』『戦略硬直化のスパイラル』など。 ----------
経営学者 中川 功一