39歳オールドルーキー パリ・パラリンピックのブラインドサッカー日本代表に 広島県熊野町出身の後藤さん
28日開幕のパリ・パラリンピックに出場するブラインドサッカー日本代表は、39歳のオールドルーキーが攻守で体を張る。広島県熊野町出身の後藤将起(A―pfeile広島BFC)は、代表10選手で最短の競技歴6年。「だからこそ、まだまだ伸びしろがある。得点に絡みたい」と、メダル獲得へ意気込む。 遅咲きには理由がある。30歳で突然、視力を失った。広島市内で理学療法士をしていた2016年冬、訪問先で「お客さんに曇ってきましたねと声をかけたら、晴れているよって言われて」。突発性と診断された視神経の炎症が一向に回復しない。「死んだ方がましだな」と、1年ほどは生きる気力も失った。 「物心がつく子どもたちに、働く父親の姿を見せたい」と通った特別支援学校で、視覚障害者らによる5人制の競技に出合う。全国大会にも出場した元サッカー少年は、目で情報収集していたプレー経験に苦しむ。「どっち向きに立っているか分からず、コートの外へ出ちゃったこともある」。周りの声を頼りに、鈴の音が鳴るボールを追い始めた。 22年に競技環境を求めて単身で上京。耳を澄まし、心技体を研ぎ澄まし、日本代表入りを果たした。パリには、広島で暮らす家族も応援に駆け付ける。「支えてくれた妻と3人の子どもたちに、かっこいい姿を見せたい」。かけがえのない目標を、はっきりと見据えている。
中国新聞社