【RISE】白鳥大珠×植草歩が対談:空手、日本を代表として戦うこと、コンディショニング、SNSの活用など大いに語り合う「しっかりチャンスを取ってそのビジュをみんなに見せつけてください!」(植草)
■試合の日を想定した模擬練習をしたら良いと思います(植草)
――植草さんはそういう中で大会に出られて、1日に何試合もしていたじゃないですか。その1日に何試合もするという“勝ち抜くコツ”はありましたか? 植草 白鳥選手の場合は1試合してから次の試合が結構時間が空くんですよね。 白鳥 僕らって基本1試合しかしないんですよ。今回のトーナメントは8人制のトーナメントで1日最大3試合やるんですけど、1試合は3分3ラウンドでやります。勝ち上がったら間は2時間とかあるんじゃないですかね。 植草 自分たちはそんなに空かなくて、5分とかでした。3分の試合をするんですけど正直5分くらいかかるんですよ。それで自分はチャンピオンだったので1番下なんです。日本では1番上なんですけど海外では1番下にされて、勝ち上がった人と自分が戦うって感じだったので、自分のレストって5分しかないんですよ。そうなると頭が回らなくなってきたりあくびが出てきたりして、あくびが出ると酸欠とか糖不足を意味するので、1試合終わったらゼリーを全部飲んだりして補給しながら戦っていました。当てる競技に比べたら消耗は少ないと思うんですけど、全てリカバリーするのは難しいと思うのですが、頭の疲れなどのリカバリーをすることは心がけています。毎回毎回次に対戦する選手のウィークポイントと得意な部分を見極めて、得意な部分では取らせずに弱点の部分はチャンスなので畳み込むという事をずっとしてきました。自分たちは8点勝負なんですけど、私のスタイルって8-0で勝つ事はないんですよ。心理戦で駆け引きをするのが好きなので、1-0でも2-0でも地味に常に勝ち続けるというのを続けたので、日本でも海外でも勝ち続ける事ができたと思います。なので、食事の部分と後は対戦相手の分析ですね。 白鳥 こういう1日に何試合もするっていうのがあまりないんですよね。僕もプロになってから1日に最大2試合した事があるんですけど、その時の経験で言うと1回戦を勝ち上がった時の疲労感はあまりなかったんですよ。それで決勝までの時間がその時は5時間くらいあったんですけど、1回アドレナリンが一気に上がったものが一気に引っ込んで、すごく体の疲労感が出て重くなっちゃって。決勝まで体のだるさが取れなくて、1回寝ようかなって思ってたくらいでした。 植草 自分は寝たことあります。今はリーグ戦なんですけど、リーグの中で1位通過したらトーナメントになるので、それまでの間が2時間くらい空くんですけど寝ますね。本当は良くないと思うけど、海外の選手とかも普通に寝てますね。ホテルに帰ってしまう人とかもいるので、そこは自分よりも図太いなと思いました。自分も寝ますけど、起きたら1時間くらいウォーミングアップして体を作って入っていくんですけど、それの模擬練習をしたら良いと思います。 白鳥 模擬練習? 植草 例えば、1回戦目を戦い終えて、次に勝ち上がってくる選手のイメージをして休みます。またそれを 繰り返して3試合で優勝するようなイメージをするんです。自分は5試合で優勝だったら決勝戦までのイメ ージをして、朝の入りから入場シーンから全て1度イメージ通りに1日動いてみるんです。東京オリンピック前もそれをやりましたね。 ――それをやっておくと安心ですよね。 植草 本番同様のプレッシャー感とかを全て同じようには作れないんですけど、疲労感を感じ取れたりします。当時はトレーナーもいたし栄養士やメンタルコーチもいたので、感情やどんな感じだったのかも全て自分のレポートに書いて全て伝えていました。ふくらはぎがすごく張った感じがあったら、それは足捌きが足りないのか体のリカバリーができていないのかなど、ケアするほどトレーナーさんにも伝えます。今回の大会で1発勝負だと、いつもの大会で1勝するのとは中身が違うからしんどいと思うし、そういう事ができると良いのかなと思いました。 ――沢山ヒントを頂きましたね。 白鳥 1DAYっていう、3試合するっていう事を想像できていない部分がありますね。空手をやっていた時は子供の頃だったので、1日何試合とかやることもありましたけど、その当時とは全く違うと思いますし、未知の領域って感じがしますね。 植草 やってみたら良いんじゃないかな。そしたらセコンドの方も理解すると思いますし、スパーリング相手だけフレッシュな選手を3人用意しておいて、似た感じの状況を作るのが良いと思います。この前自分も生徒にやらせたんですよ。新1年生で初めての公式戦で千葉選手権だったから、その時に模擬で朝から夕方まで、個人から団体まで全部やったんですよ。それが「すごく疲れた」って言う子もいたり、補食が足りていなかった子もいたり、スタミナが足りていなかった子もいたり。自分では「こんなの余裕だろ」って思うことも彼らにとってはすごくキツイものになるから、自分では分からない子供たちの意見が聞けるのでやっておいて良かったですね。 ――確かにシミュレーションは大事ですね。あとは“補食”と言うものが新鮮ですね。 植草 え、摂らないんですか? ――何かしら摂りますけど、白鳥選手はRIZINのトーナメントに出場した時はどうでしたか? 白鳥 どうだったけな…(笑)。 植草 体重戻せるのは何パーセントって決まってるんですか? 白鳥 それは決まってないので問題ないです。 植草 これから歳が上がっていくから、食事に気をつけたほうが良いと思います。気づいてくると思うんですけど、疲れが取れなかったりするんですよ。年齢が上がると「反射が遅れる」とか「筋力が衰える」って皆んな言うんですけどそこは感じなかったし、疲労が抜けないですよね。 白鳥 疲労感は今でちょっと感じ始めていますね。 植草 自分も競技をしていて、1週間普通にできていたのが難しくなって、月曜日をオフにしていたのが木曜日もオフにしないと身体がもたないとか。そういう風になってくると思います。 ――キャリアの晩年は疲れをどう対処されていたんですか? 植草 少しプラセボかなと思うんですけど、私は「このトレーナーに見てもらったら怪我もストレスも疲労も全部抜ける」って思っている人を常にそばに置いていました。後は世界選手権が5日間ずっと試合があっ て、しかも初日に個人でファイナルまで決めるんですよ。次に団体戦で個人の決勝、団体の決勝みたいな感じになってくるので、最終日は全身筋肉痛みたいな感じで力みもあるし、食事も気をつけていましたし、 朝に何を食べるとか補食で何を食べるとか、睡眠もすごく大切にしていました。本当にガサツな人間だっ たので、電気をつけたまま寝るとか全然してしまっていましたし、当時は他の選手と部屋が一緒だったの で、「歩先輩どうせ消さないから」って気を使って電気を消してくれたりしていましたね(笑)。寝すぎにも注意していて、寝るだけ寝れてしまうから自分の睡眠時間のベストを見つけていくってことをしていました。自分は8時間睡眠が良かったので、8時間寝たら朝起きてご飯をちゃんと食べて、その後ケアしてもらってちょっと歩いて試合に向かうとか。そういう自分の体のリズムが上手くいくようにとか、疲れている中でも勝ち続けられる体を作っていくという事を意識していました。 ――勉強になりますね。 白鳥 やっぱりトップアスリートってそうなんだろうなって思いました。この間魔裟斗さんと対談したんですけど、同じような事を言っていたのでやっぱりそうなんだろうなって思いました。 ――厳しいところをきちんとやらないといけないって事ですね。 白鳥 そういうところですね。 植草 今までは若くてフレッシュで「イェーイ!」みたいな感じで勝てたと思うんですよ。自分が世界チャンピオンになった時がそうだったんですけど。でもそれ以降継続して勝ち続けるって分析もされるし、そうなった時にどれだけ自分がプロフェッショナルになれるかっていうのが大事で、“孤高を目指そう”っていう事を自分のチームとしてやっていたので、お菓子を食べていたり朝ごはんを食べないで怒られたりとかもありました。 ――白鳥選手はそういった事は流石にないですか? 白鳥 その辺は全部自己管理ですね。減量のスケジュールとかも全部自分でやっていますし、今のほと んどの選手がそんな感じだと思います。 植草 料理とかも自分ですか? 白鳥 全部自分です。毎試合色々自分で調べたりして、毎回減量があるのでその時に体感したことを覚え て「こんな感じだったら体重が落ちる。動きも落とさずに練習に臨める」とか自分に合っているものを探っていくという形でやっています。だから正直正解っていうのは分からないんですけどね。 植草 自分は現役生活が終わったから言える部分がありますね。 白鳥 自分の体管理に関しては、疲労もそうですし食事や減量とかも毎試合探ってますね。 植草 すごいなぁ。自分でやっていたんですけど、栄養士さんがついたから「これが良くない。あれが良くない」って言われてそれがムカついちゃって。「もう!一生懸命やったのに。なんでそんなこと言うの」みたいに思ってきちゃって。学校で食事のサポートがつくようになったので、昼夜は学校で食べて、朝は自分で用意するようになったんですけど、朝食べないで行くとフィジカルのトレーナーに怒られて「今日はトレーニングしないから帰れ」って言われる事もありました。自分にはそう厳しく言ってくれる人がいたり環境が整っていたこともありますけど、自分で食事を管理するってお金もかかるし体も疲れるし大変なことを続けているのですごいと思います。 ――ストイックに続けられていてすごいですね。 白鳥 でもそれが“めんどくさい”じゃなくて“楽しい”って思えるようになってきましたね。 植草 同じものをずっと食べれる人ですか? 白鳥 食べれますね。 植草 ですよね。アスリートはそうだと思います。海外に行った時は自分でご飯を持ってくるんですけど、お米としゃけと味噌汁、あとはオレンジジュースとヨーグルトを毎日そのメニューで食べていました。 ――毎日ですか。 植草 ご飯と味噌汁とオレンジジュースとヨーグルトは固定で、夜ご飯は特別に鰻だけ持ってきておいて、ファイナルの決まった日だけとかに食べていました。あとは生姜焼きや鯖の味噌煮を持ってきておいて、そこだけ変わるみたいな感じでした。栄養士さんに毎回自分で写真を撮って送るんですけど、「植草さん、これ毎日同じものを送ってますか?」みたいに言われたり(笑)。「毎日食事の内容は変わらないんですか?」と聞かれるんですけど、これが素晴らしいと言われているから、素晴らしいもので生き続けようって思ったら続けられました。「飽きないの?ストレス溜まらない?」って言われても、それに何か加えた事によって「脂質高いって。逆にもっとこれ足そうよ」って言われることの方が自分のストレスなので、良いと言われたものを続けられるのってアスリートの特殊能力ですね(笑)。
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