【虎になれ】虎党を盛り上げた佐藤輝明、26歳の同学年・村上頌樹へ見せた2度のボディータッチ
<阪神8-1中日>◇27日◇甲子園 終盤、ついに爆発した阪神打線が甲子園を歓喜させた。だが中盤に虎党を盛り上げたのは佐藤輝明だろう。5回、1死走者なしから左前へ安打。打球を見て、猛然と二塁を狙う。完全に暴走に見えた。左翼から送球が戻り、タッチアウト。誰の目にもそう見えたが1人、佐藤輝だけがリクエストをベンチに求めた。 「こっちから見てたらアウトのタイミングに見えたからのう」-。そう話した指揮官・岡田彰布だが少々、苦笑しながら審判にこれを要求。その映像が甲子園のビジョンに流れた。すると確かにセーフのようにも映るではないか。 沸きに沸く虎党。だが判定は覆らない。今度は「えーっ」と不満の声が巻き起こる。たった1つのプレーでここまで沸かせるのが、やはり佐藤輝という選手だと再認識させられた。 暴走だが「こういうのも悪くない」と思った。打てない打線。先発・村上頌樹が好投しても援護できない。膠着(こうちゃく)していく中でイヤな予感がよぎる。そんなムードをイチかバチかでぶち破ろうとする気持ちが見えたのだ。 「そうだよ。今は打線が苦しいしね。次の塁を狙う姿勢は常に見せなきゃいけない。アグレッシブに狙っていけばいいんだよ」。ヘッドコーチ・平田勝男はそう振り返った。 その佐藤輝、試合中に「ほう」と思わせる光景があった。自身が2点適時打を放った7回だ。中日側が投手交代するタイミングで1度、ベンチに下がろうとしたとき。キャッチボールする村上のお尻をグラブでポーンとたたいたのだ。 ともに本年度26歳の同学年。智弁学園で3年春に甲子園優勝投手となった村上、仁川学院時代は実質、無名だった佐藤輝と高校時代の実績は違うが、ともに猛虎を背負って立つ存在だ。しかし今季、佐藤輝はなかなかバットで援護できない。象徴的だったのは5月14日の中日戦(豊橋)。力投・村上の足を引っ張る失策までおかしてしまった。 口にするかどうかは別にして、いろいろな思いがあるだろう。この試合、9回表に完封を逃し、ベンチに下がる村上の頭を、今度は軽く空手チョップをする佐藤輝の姿もあった。 「きょう1日で終わってたら一緒やからな。きょうの感じで、明日ゲームに臨むか。それが一番よ」。快勝に岡田はそう言った。簡単ではないが、この雰囲気を続けていければ-。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)