小学校低学年で「身長が伸びすぎる」「胸や睾丸が発育する」侮ってはいけない思春期早発症。脳腫瘍の可能性も【実話|医師監修】
小学校低学年で身長が伸びすぎるときは思春期早発症を疑って
今西先生:ほかに思春期早発症の問題点は、そのままにしておくと将来的に低身長になりやすいことです。 先に紹介した「思春期早発症の主な症状」のほか、小学校低学年で身長が急に伸びすぎたときも思春期早発症が疑われます。目安としては6~7歳の1年間で男女とも約6cm身長は伸びますが、それよりはるかに上回る場合は思春期早発症を疑い、かかりつけの小児科で相談しましょう。 なかには恥ずかしがって受診を拒む子もいるかもしれませんが「成長が少し早いだけだよ。でも病院で診てもらおうね」と受診の必要性を伝えてください。
治療をしなくてもよい場合もあるので、担当医とよく相談を
今西先生:思春期早発症と診断されたら、担当医と治療についてよく相談してください。 治療は、①性ホルモンの過剰分泌を抑えて症状の進行を遅らせる、②骨が成熟するのを抑制して、身長の伸び止まりを防ぐことが目的で、4週に1回、医療機関に通い注射をします。ほかには血液検査なども行い、治療は数年続きます。 最新の研究では、次のことがわかっています。 1)7歳以上で思春期早発症の進行が比較的ゆるやかな場合は、必ずしも治療が身長の伸びに影響を与えるわけではない 2)治療を行ってもすべての子どもが同じようによい結果を得るわけではない ほかには副作用として①女の子は初経がある(一時的な症状)、②注射した部位が硬くなったり、赤く腫れたりするも。また治療が保険適用外となる場合もあります。 ■将来の身長を予測して、治療を考えても 今西先生:なかには「親が小さいから、子どもは低身長でも仕方ない。治療をしなくてもいいのでは?」と考えるママ・パパもいるかもしれませんが、計算で子どもの将来の身長を予測することができます。 ・男の子は、 (両親の身長の合計+13)÷2 ・女の子は、 (両親の身長の合計-13)÷2 将来の予測身長と現在の身長の差を見て、治療をするか検討してもいいでしょう。
デリケートな診察もあるので、医療機関選びは慎重に
今西先生:思春期早発症の治療は、一般的に思春期が来る時期(女の子は10歳ごろ、男の子は12歳ごろ)まで続けることが多く、長期におよびます。プライベートゾーンを診るなどデリケートな診察もあるので、医師との信頼関係が必要です。 また子どもの身長を伸ばしたいからと、最近は美容クリニックで成長ホルモン治療を受ける子どももいるようですが、子どもの病気は小児専門医に診てもらうのが基本です。ママ・パパには、医療機関を選ぶときそうした視点も持ってほしいと思います。 【記事監修】 今西洋介先生(ふらいと先生) 新生児科医、小児科医。小児医療ジャーナリスト、一般社団法人チャイルドリテラシー代表理事。著書に『新生児科医・小児科医 ふらいと先生の子育て“これってほんと?”答えます』(西東社)など。小児医療など子どもの問題をSNSで発信する。
取材・構成/麻生珠恵