シート打撃で阪神・岩崎優から二塁打を放つ前川右京。岡田彰布監督はCS初戦の先発起用を明言した（撮影・根本成）

キーマンは右京よ―。阪神・岡田彰布監督（66）は8日、甲子園での全体練習で12日のクライマックシリーズ（CS）ファーストステージ開幕戦（対DeNA、甲子園）で前川右京外野手（21）を先発起用することを明言した。相手先発は今季13勝をマークした左腕の東が濃厚。今季は左投手の先発試合でほぼベンチスタートだった21歳の若虎の成長を買い、相手エース攻略の秘策としてぶつける。 【写真】手を伸ばすファンに応え…自身もギリギリまで背伸びをしながらファンサービスに努める阪神・前川 ネット越しに見つめていた岡田監督が大きくうなずいた。甲子園で行われたシート打撃。前川のバットから快音が響き渡る。岩崎の投じた内角低めの直球に肘をたたんでバットを振り抜くと、ライナーで右翼線に弾む二塁打となった。 「（CS初戦は）前川でいくよ！！」 この日は多くを語らなかった指揮官が、クラブハウスに引き揚げる前に宣言した。 12日のCSファーストステージ開幕戦。相手先発は今季13勝を挙げた東が有力だ。高卒3年目の今季、前川は「6番・左翼」で開幕スタメンを勝ち取ると、116試合に出場してレギュラーシーズンを1軍で完走。打率・269、4本塁打、42打点をマークした。一方で、左投手の先発時はスタメンから外れることが多く、東が登板した5試合はすべてベンチスタート。シーズン中、指揮官は「（左投手と対戦して）崩されることもあるからな、打席で。タイミングが合わんように（なる）」と意図を語っていた。 だが、シート打撃で守護神の岩崎を捉えた対応力を見て、腹は決まった。終盤は左翼で併用し、9月21日（横浜）に東からプロ初本塁打を放った井上も選択肢の一つだったが、迷いは吹っ切れた。 二塁打を浴びた岩崎も太鼓判を押した。前川が新人だった2022年3月に2軍のシート打撃で対戦したときと比べ「ちゃんと左（投手）の対応ができるように（なっている）」と成長を証言。さらに「前川選手に期待したい。期待できます」と力を込めた。 大きな期待を背負う前川には気負いも、左腕への苦手意識もない。出場機会は少なかったが、今季の対左投手の対戦成績は打率・271（48打数13安打）。対右投手の同・268（276打数74安打）を上回る。「（スイング時に）開かない。それだけはちゃんと気を付けてやってます」とうなずく。そして初対戦となる東については「制球力も良く、追い込んでからのチェンジアップもすごいイメージ。1球で仕留められるか、が大事になってくると思う」と、一振りで仕留める重要性を語った。 〝岡田チルドレン〟の一人だ。今季限りで退任する虎将がチームに復帰した昨季、交流戦でのDH要員として初の1軍昇格を果たした。今春の沖縄・宜野座キャンプでは打のMVPに指名された。シーズン中は打撃フォームを崩すと、身ぶり手ぶりでアドバイスを受けた。そんな指揮官との最後の戦いで目指す、下克上での2年連続の日本一。そのためにはCS開幕戦で、東を打ち崩すことが第一関門だ。