【ミャンマー】高インフレ継続、通貨安響く 国内紛争に大洪水が追い打ち
ミャンマーの高インフレが少なくとも来年まで続きそうだ。自国通貨チャットの下落が主因で、アジア開発銀行(ADB)は25日、2025年度(25年4月~26年3月)までのインフレ予想を大幅に上方修正した。同国は事実上の内戦状態に陥ったことで通貨安や輸出不振に拍車がかかり、物価の上昇圧力が強まっている。比較的平穏な最大都市ヤンゴンでも、今月に国内各地で発生した大洪水が追い打ちとなり、価格が一気に2倍に高騰した食品もある。 ADBは最新の経済見通しで、東南アジアの24年(国によっては年度)のインフレ率予測を4月時点の3.2%から3.3%に引き上げた。通貨安に歯止めがかからないラオスやミャンマーなどの上方修正が全体を押し上げた。両国のインフレ率予測はそれぞれ25.0%、20.7%と、ともに約5ポイント上方修正され、外貨不足で経済危機に陥ったパキスタンと共に20%を超える。 4月時点では、ラオス、ミャンマー両国のインフレ率が来年にかけて大きく下がっていくと予測していた。ただ、ラオスでは増税が響いて25年も2桁上昇し、ミャンマーでは通貨安と国内紛争に伴う貿易の混乱で高インフレが続くとみている。 ミャンマーは21年2月のクーデター以降、政情不安が続いている。軍事政権下でチャットの価値は大きく下がり、今年8月には実勢レートが1米ドル(約145円)=7,000チャット近くと過去最安値を記録した。米利下げ観測などによりやや持ち直し、足元では5,000チャット前後で推移している。 ADBは、政治の展望が悪い状況で、今後も通貨安基調が続くとみている。徴兵制の実施もあって国外逃避する市民が増えており、資本の流出がチャット相場を不安定にしているという。 ■統制機能せず、洪水は供給網に打撃 ミャンマー軍政は統制の強化でチャット相場と物価を安定させようとしてきたが、効果が出ていない。 最大都市ヤンゴンの伝統市場で営業するコメ販売店の店員は25日、NNAに「軍政の方針に沿って価格を下げると赤字になる。価格上昇は止まらない」と話した。 同店舗では、北部ザガイン地域シュエボー産の最高級米シュエボー・ポーサン種を1袋(約50キログラム)当たり21万チャット(実勢レートで約6,100円)強で販売。軍政下の当局が定める9月の「適正価格」を約4割上回る水準だ。倉庫街などでは価格統制が厳しいが、輸送費もかさむ中でこれ以上の値下げは許容できないという。 国連食糧農業機関(FAO)によると、ヤンゴンにおける低級米エマタ種の価格はクーデター前の4倍に高騰している。小売価格は6月に1キロ当たり2,295チャットと過去最高値を更新した。統制により7月は2,000チャット未満まで下がったが、8月に再び上昇した。 食品によって価格上昇率は異なるが、伝統市場の関係者は「物価上昇が止まらない」と口をそろえる。タマネギの供給業者は「台風11号(ヤギ)に伴う洪水により価格が2倍に高騰した」と話した。ジャガイモも洪水によるサプライチェーン(供給網)への打撃が影響し、高値で取引されている。 ミャンマー各地で紛争や水害が発生しており、ここ数カ月は必需品の供給不足と価格上昇に悩む市民が増えている。ヤンゴンに住む男性は「高原の避暑地ピンウールウィン(中部マンダレー地域)産の牛乳が全く手に入らなくなり、子どもに飲ませてあげられなくなった」と話した。