いじめもDVも「やられる側が逃げる」状態を、もう日本は脱してほしい。子どもの権利を保全すべきです
「共同親権」「子どもの連れ去り」という言葉を聞いたことがある人、多数いらっしゃるのではと思います。 「子の連れ去り違憲国家賠償訴訟」の共同代理人を務める神奈川法律事務所所属の弁護士・大村珠代先生に、この問題について5話連続で詳しくお話を伺うシリーズです。 普段DV・モラハラを受ける女性の声を聞く機会が多い編集部は、引き続き「DVから逃げきれなさそうな」共同親権には懐疑的な立場でお話を伺っています。
海外では子どもの権利を優先して「ケースごとに親が判断する」取り決めも
ここまでのお話で、日本では場当たり的に対応してきた経緯があるため、狭間で救出されないケースがあることが理解できてきています。別居したため重大事項の決定を夫婦で相談できないケースは、海外ではどうなっているのですか? 「たとえばドイツでは、親権という概念をやめて『親の配慮』に改正しました。別居や離婚をしても共同配慮が原則で、両親は合意により子の福祉のために親の配慮を行使しなければなりません」 それは具体的に、どういうケースでどういうことを行うのでしょうか? 「子にとって極めて重要な事項、たとえば子どもの居所、面会交流、学校の選択、手術の選択、危険を伴う外国旅行、宗教の選択などは、両親の合意が必要です。意見が異なるときでも両親は、合意するよう努めなければなりません。それでも、両親が合意できないときは、家庭裁判所が親のいずれか一方にその決定権を委ねることができます。日常的な事項については、同居親に単独の決定権を認めています」
ドイツはDVありの場合「単独配慮」に切り替える。フランスは?
ドイツにもDV夫はいると思うのですが、配慮といえども、これは友好的な離別の場合にだけ機能することですよね。結局「逃げられない」ということでしょうか? 「いいえ、両親が一時的でない別居をしている場合でかつ他方の親の同意がある場合や子の福祉にかなうとき、つまりDV事案などでは共同配慮から単独配慮の移行ができます。私は、ドイツのように事項ごとにあらかじめ法律で定めるか、または離婚後の養育計画作成を義務づけるかがいいと思っています。養育計画の中で事項ごとにどのように決めるか定めておけば、そのあとも個別具体的な事案に柔軟に対応できます。当事者にとっても利用しやすい制度になると思っています」 どうしてもDVから逃げることばかり聞いてしまうのですが、他の国ではどうでしょうか? 「フランスでは、婚姻しているかどうかにかかわらず、父母は共同で親権を行使するのが原則です。もっとも、子の身上に関する日常的な行為については、父母の一方が単独で行うとしても合意が推定されます」 ドイツほどきちきちっとケースをきめず、もう少し柔軟に事項を定めている、という感じですね。これはお国柄が出るんですね、革命と自由の国らしい感覚だと感じます。 「フランスでも、重要な決定について合意に至らない場合には、例外的に子の利益のために裁判官は、親権の行使を父母の一方に委ねることができます。ただし、親権を行使しない親も子の養育及び教育を監督する権利・義務を保持します。また、訪問・宿泊の権利の行使も、重大な理由による場合を除いて奪われません」