直撃取材とコトバから読み解く ゼレンスキー大統領訪米の成果と課題
■最大の支援国アメリカにも不安 野党共和党に直談判も…
「支援疲れ」への対応は、最大の支援国・アメリカでも目下、大きな課題だ。連邦議会では、下院の多数派を占める野党・共和党の強硬派がウクライナへの240億ドル(3.5兆円)規模の追加支援策に反対。議会で予算がまとまらず、政府機関閉鎖に追い込まれる可能性が高まっている。 こうした中、21日に連邦議会に乗り込んだゼレンスキー大統領。当初求めた議会での演説は、共和党のマッカーシー下院議長に拒否され、マッカーシー議長ら下院の与野党指導部、さらに全上院議員との会談は非公開で行われた。会談後、記者の「共和党からの支援は得られると確信できたか?」という問いに「とてもよい会談ができた」と答えたゼレンスキー大統領。しかし、マッカーシー議長らとの会談直後、記者団の前を通る際に一瞬、複雑な表情で目を伏せる場面もあった。マッカーシー議長は会談後「私は国内の財政を優先したい」と語っており、直談判がどこまで奏功したかは定かではない。 来年に大統領選を控えるアメリカでは今後、共和党がウクライナ支援の是非を争点にし、与野党の対立が激化することが予想される。もし共和党のトランプ氏が大統領に返り咲けば、現在のような軍事支援は得られないとの見方が強い。ゼレンスキー大統領にとって、さらに厳しい局面が待ち受ける可能性もある。
■批判意識しアメリカへの「感謝」強調…米国民に響くか
ワシントンでの一連の日程でもうひとつ目を引いたのが、ゼレンスキー大統領が「アメリカへの感謝」をたびたび強調したことだ。バイデン大統領との首脳会談、さらにその後の国立公文書館での演説で、何度も「Thank you」と連呼した。 「好むと好まざるとにかかわらず、人々は感謝の気持ちをみたい」「我々はAmazonではない」イギリスのウォレス前国防相が今年7月、”目に見える感謝が少ない”とウクライナ側に注文をつけたのは記憶に新しい。 こうした中「大統領はワシントンでは、とにかくアメリカの人々に支援への感謝を伝えたかった」(ウクライナ政府関係者)という。ウクライナの負傷兵を治療したアメリカ人医師など、特に多大な支援に関わったアメリカ人に勲章を授与し、目に見える形で感謝を示す場面もあり、何とか大規模な支援の継続を確保したいという切実さがにじんだ。