早大、あと1勝で18季ぶりの完全V…今秋ドラフト候補の大砲が頼もしい復調「日本一に導きたい」
◆東京六大学春季リーグ戦▽第8週第1日 早大8―1慶大(1日・神宮球場) 観衆3万人が集った早慶戦の第1戦は、勝ち点を挙げれば優勝の早大が慶大に8―1で大勝し、2020年秋以来7季ぶり47度目のVに王手をかけた。あと1勝で重信(現巨人)らを擁した15年春以来、18季ぶりの完全優勝が決まる。今秋ドラフト候補の吉納翼外野手(4年)が2本塁打で4打点を挙げ、エース・伊藤樹(たつき・3年)は8回1失点、9奪三振で今春は無傷の3連勝。敗れた慶大は3位が確定した。 打った瞬間、着弾点を確信した。吉納は3万人の歓声と悲鳴をBGMに、力強くダイヤモンドを一周した。一塁ベンチに戻ると、小宮山悟監督(58)と力強くハイタッチ。華の早慶戦でヒーローに躍り出たのは、試合前まで打率2割2分9厘と不振にあえいでいたスラッガーだった。 「あの歓声は、死ぬまで絶対に忘れない。ここまで毎試合ヒーローが変わっていたので『そろそろ僕だな』と思って1週間、死ぬ気で練習をやってきました」 5―0の6回2死二、三塁、慶大の3年生左腕・荒井駿也の直球をバックスクリーンに放り込んだ。1点リードの3回2死では外丸東真の外角低めスライダーを逆方向へ。風にも乗って左翼席に運んだ。早慶戦で2発4打点と結果を残せたことに「大学野球の最高峰となる舞台。絶対活躍したい気持ちでした」と笑った。 小宮山監督の“魔法の言葉”も奏功した。吉納が6回の打席に立つ前、ベンチで伝えた。「ここで打点を挙げれば、ベストナインがあるかもしれないぞ。この春、一番の集中力で打て!」。吉納のやる気スイッチがONとなり、見事に捉えた。打率こそ2割5分6厘だが、リーグ単独トップの3本塁打に。会見では投票権を持つ担当記者を見渡し「ぜひお願いします!」と頭を下げ、異例の懇願。これには指揮官も「できるんだったら、最初からやれよ!」と笑みを浮かべた。 ドラフト解禁年。「いいところを見せたい」と意識するあまり硬さがあったが、大一番で光が差した。視察したDeNA・稲嶺アマスカウトは「ボールを引きつけて叩けていた。飛距離を出せるというのは、プロでも可能性がある」と熱視線。プロ117勝の小宮山監督も「プロに送り出しても、恥ずかしくない打撃だった」と称賛した。 2日に勝てば、今の早大ナインにとって入学以来初の優勝が決まる。「絶対優勝するつもり。自分がチームを日本一に導きたい」と吉納。さあ“マジック1”。悲願の天皇杯は、もう目の前にある。(加藤 弘士) ◆吉納 翼(よしのう・つばさ)2002年8月16日、愛知・春日井市出身。21歳。東邦では2年センバツ優勝。3年夏の愛知代替大会ではV候補も校内に新型コロナ感染者が出て4回戦を出場辞退。高校通算44本塁打。早大では1年春から出場し、2年春から外野のレギュラー。2年秋は打率3割6分1厘でベストナイン。リーグ戦通算62試合で打率2割6分5厘、9本塁打、36打点。50メートル走6秒2。遠投105メートル。180センチ、87キロ、右投左打。
報知新聞社