高木菜那金背景にリンク特性を生かす世界一カーブ滑走技術
だが、集団の中で冷静に自らのポジションをキープし続けた。そのルーツには、「昔サッカーをしていたので周りを見る力があったかな」という。 さらに金メダルにつながったのが、世界最高峰とも言われる高木菜那のカーブ滑走技術だ。実は、16人もの選手が同時に滑るマススタートは、通常、練習レーンとして封鎖してある一番内側のコースを開放して行われる。インレーンの半径が通常よりも5メートルほど狭くなりカーブが急になっているのだ。 スピードが乗っている状況で、このカーブを最短距離で滑りこなすには、かなりのテクニックを要する。だが、高木菜那は「サンキョーでやっていたショートトラックがここにきて効いている」と振り返った。 高木菜那は、所属チームでショートトラックにもチャレンジしてきた。1周が100メートル強しかないショートトラックのリンクで鍛えてきたカーブ滑走技術が、カーブが急なマススタートリンクの特性を生かしてインをつく戦略を成功に導いたのである。そこがオランダのシャウテンとの違いだった。さらにもうひとつの理由があった。 スケートのブレードをより鋭いカーブに適応できるようにチームのメカニックが微調整してくれていたというのである。 「スケートを調整して下さったので良い形できれいに回れていた」 レース後、高木菜那はスタッフに感謝の意を表した。 五輪の公式サイトも高木菜那の快挙をこう伝えた。 「16周のレースの興奮の最後に高木は、地元韓国の金メダル最有力で現役世界チャンピオンのキム・ボルムを追い抜くため、最終コーナーを素晴らしいスピードで滑り抜けた。団体追い抜きで日本の金メダルに貢献した高木は4、8、12週目の中間スプリントではポイントを獲得しなかったが、1位でゴールした最後のスプリントで60点を獲得。後半に得点を伸ばし、勝利を手にした」 金、銀、銅のメダルを獲得した妹の高木美帆(23、日体大助手)と比べられ続けた姉は、平昌五輪のクライマックスで自分にしかできない素晴らしい有終の美を飾った。