ドローンからFPVドローンが発進 史上初の「無人空中空母」がウクライナの空に現る
FPV(一人称視点)ドローン(無人機)を搭載し、空中から発進させるドローン、史上初の「無人空中空母」(ドローン運搬ドローン)がロシアとウクライナの戦争で運用され始めた。ドローンからドローンが飛び立つこのマトリョーシカ式ドローンは、この戦争を特徴づける兵器になっている無人システムの新たな技術的進歩だ。 小型FPVドローンは戦車や大砲、歩兵、掩蔽壕、偵察ドローン、さらにはヘリコプターに対しても破壊的な効果をもつものになっている。ただ、バッテリーの駆動時間が短いため、あまり遠くまで飛べないという制約があった。無人母機はこの弱点をある程度補うものになる。 最近、ウクライナ軍の前線の奥深くであったFPVドローンによる攻撃は、ロシア軍がこのシステムを配備したことを示している。ウクライナ軍も同様のシステムを用いている可能性が高いが、現時点では秘匿されている。 ■FPVドローンの進化 「われわれの部隊のひとつが8インチ(約20cm)フレームの標準的なドローン2機の攻撃を受けた。場所は前線から40km離れていた」。ウクライナの著名な軍事技術評論家であるセルヒー・フレシュは今月中旬、自身のテレグラムチャンネルでそう報告し、「2機のドローンはおそらく、大型の再利用可能なドローン母機によってわれわれの後方に運ばれたのだろう」と推測している。種類は特定されていないという。 攻撃FPVドローンは、屋内トラックでゲートなどの障害物を通過させながら飛行させるレース用のクワッドコプター(回転翼が4つのドローン)から進化した。当初は短時間で高速の飛行が想定されていたので、制御範囲は問題にならなかった。初期の攻撃FPVドローンの制御範囲は3~5km程度だった。 その後、設計が改良されるにつれて制御範囲は広がり、ドローンに大型の自立型アンテナが採用されると10km超に拡大した。さらに、無線中継器を搭載した別のドローンを「空飛ぶ中継基地」として利用できるようになると、無線通信の範囲に関する制約はほぼなくなった。現在、FPVドローンは中継ドローンを介して10~20km先の目標を攻撃するのが普通になっており、ときにはもう少し離れた目標も攻撃している。