ドローンからFPVドローンが発進 史上初の「無人空中空母」がウクライナの空に現る
ロシアもウクライナもいくつかのFPV運搬ドローンを開発している
制約として残っているのはバッテリーの持ちだ。現在、入手可能な最高のバッテリーを用いてもFPVドローンの航続時間はおおむね15分以下なので、航続距離はせいぜい30km強が限界だろう。回転翼機は滞空するだけで多くのエネルギーを消費する。固定翼機型にすれば航続距離は大幅に伸びるのだが、ドローンの操縦士は小型で安価なFPVドローンを好んでいる。そのため技術者たちが模索してきたのが、FPVドローンを別のドローンで運ぶという方法だ。 ロシアのドローン製造業者は今月、そうしたシステムとして「ブーリャ-20」(ブーリャはロシア語で「嵐」の意味)を公開した。固定翼機型とみられるドローンで、地上の管制側からおよそ70kmの範囲を飛行し、複数の攻撃FPVドローンを発進させることが可能とされる。ブーリャ-20は操縦士による目標発見のため高倍率の光学機器を備えるほか、中継基地としての機能ももち、FPVドローンはそこから最長15km離れた場所まで飛行できるという。最大積載量は15kgということなので、FPVドローンを数機運搬できるかもしれない。メーカー側によるとすでに小規模な生産が始まっている。 ロシアで昨年8月に催された国際武器見本市「アールミヤ(アーミー)2023」で、別の地場企業スビャーシ・スペツザシータ社は「アドミラル」という似たようなドローンを出展していた。アドミラルはFPVドローンを2機搭載して400km航続できるとされる。今年3月には、ロシアで3種類目のFPV運搬ドローン「プチラー(ミツバチ)」が目撃されている。 フレシュは「こうしたコンセプトは知られていたけれど、われわれに対して用いられるのを見たのは初めてだった」と記している。使われた機体は固定翼機型、回転翼機型のどちらの可能性もあるとし、「敵のチャンネルで試作機を見たことがある」とも述べている。 ウクライナ軍も回転翼機型のドローン運搬ドローンをいくつか試している。ウクライナ海兵隊の精鋭ドローン部隊で、指揮官のコールサインにちなんで「マジャールの鳥(プタヒー・マジャラ)」という通称で知られる第414独立無人攻撃機システム連隊は今年5月、爆撃機やFPVドローン運搬機として利用できる大型の回転翼機型ドローンを受領している。また、ウクライナの非営利組織ワイルド・ホーネッツが開発した巨大なFPVドローン「クイーン・ホーネット」もFPVドローン母機や中継機としてのテストが行われている。最大積載量は9.5kgとされる。