教員14年目の休職。台所に立てる日も立てない日も、今日を生きる
小学校教員の、やってもやっても仕事が終わらない毎日
学生時代は今より20キロ多く、帰省のときに親に「太ってる」と言われたことが長く心に引っかかっていた。 長女に母乳を与えていると、自然に体重が落ちた。 痩せるのが快感になり、職場の給食をのぞいて、自宅では決まったものしか食べなくなった。 冷凍ブルーベリー、キャベツの千切りにゼロカロリーのドレッシングをかけたサラダ、グリコのアーモンドミルクがそれだ。 半年で10キロ落ちたが、生理が止まった。再び太るのが怖くて食べられない。遅く帰宅する夫とは食事時間が別のため、気づかれなかった。 「子どもの離乳食は、“大丈夫?”と人から心配されるほど、ストイックにこだわっていました。だしをとって、魚はさばくところから。仕事から帰るとすぐ台所に立って、ブレンダーで茹(ゆ)で野菜を潰して。でも、自分はカロリーの低いものだけを食べるのです」 7時15分に家を出て、学校は15時45分までの時短勤務に。しかし、仕事は終わらないので、家に持ち帰る。子どもになにか話しかけられても、上の空になりがちだった。 「保護者からのクレームや要望があると、抱っこしながら、あやしながら、お風呂に入れながら、料理しながら、頭の隅でずっとその対応を考えています。なにか娘に聞かれても、つい“ちょっと待ってて”って言ってしまうんですよね。そういう自分にだんだんジレンマがつのっていきました」 仕事もできていない。子どもとも向き合えていない。何もできていないじゃないか私は。自分を責める日が続いた。 なにごともつい頑張りすぎてしまうタイプ、と自己分析する。「職場には、意識が高くなく、仕事ができない人もいる。すると、評価の高い人にどうしても任務が集中してしまうのです」 産後復帰して5年目には管理職を任せられ、ますます多忙を極めていた。 「教員って社会を知らないというか、新しいことをしたがらないんですよね。たとえばタブレットやエクセルや新しいアプリ。いまだにセキュリティーがどうのと言って、大半が紙ベースです。でも市町村などの公的機関にはメールやデータ化して提出します。つまり様々な作業に、二重の手間がかかるのです」 前述の通り、親からの要望も年々増す一方だ。 夫も、料理や家事をやる。だが時短で早く帰ることができる彼女のほうが圧倒的に、育児を担う時間が多い。 2023年6月のある日。 過呼吸と肋間(ろっかん)神経痛で、うつぶせのまま起きられなくなった。おおごとにしたがらない彼女に、「それ普通じゃないよ!」と夫は叫び、救急車を呼んだ。 診断は、適応障害だった。 家族と同僚、両方に申し訳ない気持ちで休職を申し出た。