ウクライナ、ロシア領内の占領地全てを数カ月内に失う恐れ-米当局者
(ブルームバーグ): ウクライナ軍は今夏に意表を突いてロシアに越境攻撃を仕掛け、同国のクルスク州の一部を占領したが、これまでにその半分程度を失った。残りの占領地も数カ月で奪回される恐れがあると、米当局者らはみている。そうなれば、ウクライナはロシアと和平交渉を行う際の重要なカードを失うことになる。
ウクライナ東部でロシアの進軍を食い止めようと必死のウクライナ軍は、兵力不足と米国などからの今後の兵器供給の不透明性に既に悩まされている。ロシア西部のクルスク州には、ロシア軍を補強する約1万2000人の北朝鮮兵士も投入された。
ロシア軍がクルスク州奪還に向け連携した作戦を仕掛けるなら、ウクライナ軍は春までしか持ちこたえられないかもしれず、その後撤退を余儀なくされるか、包囲されるリスクがあると、部外秘の分析だとして匿名を要請した米当局者は説明した。そうした作戦は1月にも行われる可能性があるという。
1月20日のトランプ政権発足も見据えると、クルスク州の占領を維持できるかは重要になる。トランプ氏は戦争を速やかに終わらせたいと述べている。ウクライナとロシアの要求が全くかみ合わないため、そこで交渉が始まるとしても停戦の合意には数カ月はかかりそうだ。ウクライナ当局者にはクルスク州を交渉材料に使いたい思惑があるが、米国の分析によると、それまで占領を続けていられない可能性がある。
ウクライナ大統領府にコメントを求めたが、回答はなかった。
トランプ次期米大統領はウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を10年または20年認めないことを条件に、戦争を現状で凍結すると提案していると報じられた。ロシアのプーチン大統領は26日、提案は関知していないとし、そのような合意は絶対にうまく行かないと述べた。
米当局者の1人は、当初の一部予測よりも長くウクライナ軍はクルスク州の占領を維持できていると指摘。米国がロシア領内への長距離ミサイル攻撃をウクライナに許可したことも寄与していると付け加えた。