第93回選抜高校野球 県岐阜商、惜敗 健闘に大きな拍手 /岐阜
<センバツ高校野球> 第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)は第4日の23日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で第1試合に県勢の県岐阜商(岐阜市則武新屋敷)が登場し、市和歌山(和歌山)に0―1のサヨナラ負けを喫した。選手たちの健闘する姿をみた観客は、スタンドから大きな拍手を送り続けた。【熊谷佐和子、大原翔、辻本知大、遠藤龍】 県岐阜商の三塁側アルプスには、ユニホームと同じ青色メガホンを手にした選手の家族約500人と、応援団や吹奏楽部の生徒約230人が陣取った。 初回、新型コロナウイルス感染症対策で太鼓以外の楽器が演奏できないため、吹奏楽部が事前収録した応援歌「UNO岐阜商」の音源を流した。吹奏楽部部長の小島一平さん(3年)は「演奏できないのは悔しいが、憧れの甲子園で自分たちの演奏が流れてうれしい」とメガホンを打ち鳴らしていた。 七回裏、先発したエース、野崎慎裕(のりひろ)投手(3年)から松野匠馬投手(3年)に交代した。スタンドでは、ともに県岐阜商OBで甲子園出場経験がある松野投手の父、文治さん(46)と祖父、勝治さん(77)が見守った。七回裏を走者を出さずに抑えると、勝治さんはほほえんだ。だが、味方打線が勝機をものにできぬまま、九回表の攻撃を終えた。 九回裏、市和歌山が1死一、二塁からの中前打で二走が三塁を回ると、県岐阜商の中西流空(りく)中堅手が本塁へ送球。判定はセーフに。スタンドの保護者らは一瞬言葉を失ったが、ゲームセットのサイレンが鳴ると、選手たちを拍手でたたえた。文治さんは「堂々と投げてくれたが、負けたという結果を受け止めて次に進んでほしい」とねぎらった。 ◇女子応援団全力 ○…アルプススタンドでは、新型コロナウイルス感染症対策で全く声が出せない中、女子11人の応援団が身ぶりを交えながら太鼓やメガホンを打ち鳴らし、観客を盛り上げた。若原かえで応援団長(3年)は、頭の上にメガホンを上げて観客に見やすいようたたくなどの工夫を凝らし「選手が実力を出し切れるよう、私たちも全力でやった」と額に汗をにじませた。 ◇互角のいい試合 ○…県岐阜商の校舎から約2キロ離れた岐阜市福光南町1の喫茶店「ベルエポック」では、同校OBの店主、鹿島靖夫さん(46)がテレビ観戦。「いつも顔を見ている選手たちの姿をドキドキしながら応援した。サヨナラ負けは悔しいけれど、互角のいい試合だった」と振り返った。 鹿島さんは2019年春以降、下宿する野球部員の食事づくりを毎日担ってきた。「子どもが何を食べているのかを保護者に知ってもらい、安心してほしい」との思いから、写真共有アプリに毎日の食事の写真を投稿し、600以上のメニューを公開してきた。「選手たちが帰ってきたら『よく頑張ったね』と声を掛け、好きな料理のリクエストに応えてあげたい」 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇夏こそ勝って雪辱を 県岐阜商・高木翔斗主将(3年) 相手走者の生還を許した時「ただ、悔しさしかなかった」。 九回裏、捕手として、マウンドに立つ松野匠馬投手(3年)に「逃げずに攻めていこう」と声をかけた。松野投手は「強気で投げるから頼む」と応えてくれた。昨秋の大会は、外角中心の配球で負けた。内角に要求した最後の球は、直球が指に引っかかって外角に寄り、高めに浮いたところを打たれてしまった。 昨年8月の甲子園交流試合の明豊(大分)戦にも出場し、2―4で敗れた。勝って雪辱を果たそうと、4番打者として、マシンで速球対策をこなしてきた。二回表にヒットを放ったが、その後は相手エースの小園健太投手が繰り出すカットボールやツーシームに「体が開いてしまった」。 「夏にもう一度甲子園に戻ってきて、次はしっかり勝ち上がりたい」 ……………………………………………………………………………………………………… ▽1回戦第1試合 県岐阜商 000000000=0 市和歌山 000000001=1