「なんて絶望的なゲームなんだ!」パチンコホール機器大手がリリースした“依存症対策ゲーム”をプレイして身に沁みてわかった「説得することの難しさ」
ローラはもう引き戻せないところまできているのか
このゲームをプレイして痛感したのは、“多額の借金をギャンブルで返済しようとしている人”を説得することの難しさだ。借金が返せなくなった結果、“自分はもう終わった”と感じてしまった人は、なかなか他人の声に耳を傾けようとしない。ゲーム内のローラはまさにそういった状況であり、主人公がどんな言葉をかけても簡単に状況は好転しないのだ。 おそらくこのローラは、すでに引き戻せないところまできているということなのだろう。つまり、ギャンブル依存症対策において重要なのは、引き戻せないところまでくる前に、周囲の人間がしっかりとケアすることではないか。最悪な状況になったときに、周囲ができることは限られている。だからこそそうならないように、早い段階からギャンブル依存症の怖さを知り、対策をしていかなければならない。 ローラだけでなく、主人公もまた簡単にカジノで身を滅ぼしてしまうという、なんとも絶望的なゲームではあるが、確実にギャンブル依存症の怖さを体感することができた。
身の丈に合わないギャンブルは身を滅ぼす
せっかくなので2022年リリースにダイコク電機がリリースしたギャンブル依存症チェックゲーム『チェッパチ』もプレイしてみた。こちらも『賢者のおしえ』同様、スマホやパソコンで無料でプレイできる。 この『チェッパチ』は、ドラゴンに襲われた村から出た主人公が、指輪を買って恋人にプロポーズをするために、日々生活をするという物語。主人公は、「狩場」(仕事)、「カジノ」、「酒場」などから選んで1週間のスケジュールを組み、体力・精神力を保ちながら、制限時間内にお金をためて指輪を買うこととなる。そして、その行動の結果から、ギャンブル依存症の危険度がわかるというものだ。 この『チェッパチ』で難しいのは、“生きていくのにお金がかかる”ということ。お金を稼ぐためには狩場で仕事しなくてはならない。しかし、ハードな仕事を続けるためには宿での休息が必要で、宿での休息にはお金が必要となり、思うように所持金は増えていかない。ギャンブルでお金を増やそうとカジノで勝負をすると、あっけなく負けてしまう。こういった負のスパイラルに陥った結果、あえなく所持金がなくなり、プロポーズのための指輪を買うことができなかった。 『チェッパチ』で得られた最大の教訓は、“身の丈に合わないギャンブルは身を滅ぼす”ということだ。お金に困っている状況でのギャンブルは、ちょっとした失敗が命取りとなる。この主人公はまさに“その日暮らし”に近い状態であり、数回のカジノで負けただけで、一文無しとなってしまった。ギャンブルはあくまでもお金に余裕がある人が、娯楽の範囲内で楽しむべきものであり、生活費を削って勝負するものではないのだ。 『賢者のおしえ』も『チェッパチ』も、普通の人がいとも簡単にギャンブルにハマって、お金がなくなってしまう姿を描いている。かわいらしいイラストのタッチとは裏腹に、かなりハードで残酷な内容であり、そのギャップがさらにギャンブル依存症の怖さを強く印象づける。ギャンブルへの依存やのめり込みに不安を抱えている人、あるいは周囲の人がそうした状況に陥っている人などは、一度プレイすることで大きな学びを得られるのではないだろうか。(了)