周庭氏「指名手配」から見える習近平氏の「焦り」
中国系豪作家の執行猶予付き死刑判決で、再び中国から離反するオーストラリア
佐々木)民主活動家の周庭氏を指名手配したり、オーストラリア人の作家も中国で拘束されていますよね。 新行)5年前から中国で拘束されている中国系オーストラリア人作家の楊恒均(ヤン・ヘンジュン)さんが、執行猶予付きの死刑判決を受けました。中国の元外交官だった楊さんは、退職後にオーストラリア国籍を取得。作家として活動していましたが、2019年1月に中国の情報機関に拘束され、2020年10月にスパイ罪で起訴されています。 佐々木)オーストラリア社会では衝撃が走っています。中国とオーストラリアの関係は、ヨーロッパより近いこともあって、中国の輸出入が圧倒的に大きいのです。ところが近年、中国の世論撹乱やコロナの問題などもあり、オーストラリアが中国から離反する傾向にありました。 新行)そうなのですね。 佐々木)2022年に政権交代し、現職のアルバニージー首相になってからは、徐々に「再び中国と仲良くしよう」という方針に戻ってきた。ところが、今回のことでまたオーストラリアが離反するだろうと言われています。
経済失墜する習近平氏が対外圧力を強める懸念も
佐々木)いろいろな国を札束で引っ叩き、自分の傘下に入れているけれど、内心では「中国は嫌だな」と思う国が増えている状況が続いています。まだ経済が強いからいいけれど、習近平体制になってからIT企業を締めつけたり、不動産の問題など経済失政が続いています。中国のトップクラスの人には経済に強い人が多かったけれど、習近平氏は強くない。しかも経済に強い政府高官を全部放り出し、自分の身の回りを子飼いで固めたのですが、その人たちはあまり経済に強くありません。 新行)周りの高官は。 佐々木)そういう状況なので、資本の国外流出が激しい。世界で株式の時価総額がいちばん大きいのはアメリカで、世界の時価総額の5割ぐらいを持っています。中国も少し前まで2割ぐらい持っていたのですが、ここ数年の経済失墜でどんどん低下し、10%ぐらいになってきたでしょうか。失われた分はアメリカの株式に回帰して、一部はインドと日本に戻ってきています。 新行)一部は。 佐々木)中国がそうなったおかげで、日本としては株式市場が活性化されて「いい」という話ですが、一方では今回のように対外的に強く出てくる。でも経済が弱っており、少子高齢化が一気に進む可能性もあるので、今後、「あまり成長できなくなるのではないか」という話になると、ますます習近平氏も意固地になって対外的な圧力を強めるかも知れない。「今度は安全保障が心配だ」という状況になりますよね。日本としては、中国があまり強大になるのは困るけれど、弱体化してますます意固地になられると、それはそれで困ります。 新行)こっちにも影響が出てくるし。 佐々木)ジレンマがありますね。 新行)加えて香港政府は、香港国家安全維持法を補完するような「国家安全条例」の制定作業を始めると発表しています。 佐々木)そうですね。