バレンティンのバッティングの秘密を紐解く
昨春の沖縄キャンプで、ヤクルトの小川監督に「バレンティンは後ろが小さくなりスイングがコンパクトになりましたね?」と声をかけると、「おそらく率を意識しているんじゃないかな」と、その変身理由を分析されていた。 実は、50本を超えるようなホームランを量産するためには、率を高めることは大事な要素である。2つは不思議な相関関係で結ばれている。おそらく彼はヒットの延長がホームランと捉えて、率を高めるコンパクトなバッティングフォームに変えたのだろう。ホームラン打者は、ヒットの総数の約3割をホームランにすることができる。ヒットの総数、すなわち分母を増やすことが、ホームランの量産につながるのである。 過去に55本を打った3人を見て欲しい。王さんは、打率・320(151安打)、タフィ・ローズは、・327(180安打)、アレックス・カブレラは、・336(150安打)である。盟友、ランディ・バースが1985年に54本を打った時も、打率は・350(174安打)で3冠王を獲得したし、松井秀喜が、50本を打った時も、打率は・334(167安打)である。3割を打つとヒット数は150本を越えてくる。すると、その3分の1が50本越えとなるわけである。私は、バレンティンの3冠王の獲得の可能性を考えるのだが、率を求めたバレンティンは、結果として、日本記録越えを手にしようとしているのだ。 彼は、日本人投手の配球なども研究していると聞くが、おそらく来日3年目で、日本野球への対応力を高め、バッティング技術の改良も含めて進化したのだろう。 常に進化を求めるという向上心の大切さ。 バレンティンが切り開いた新しい時代は、そういうメッセージでもあると思う。 (文責・掛布雅之/構成・本郷陽一・論スポ)