プラ条約交渉、つかめぬ糸口 協議継続も難航必至 生産規制で歩み寄りなし〔深層探訪〕
韓国・釜山で開かれたプラスチック汚染を規制する条約策定の国際交渉は合意に至らず、協議が継続されることになった。最大の焦点であるプラの生産規制を巡り、条文として盛り込むべきだとの主張と、反対する意見が真っ向から対立。歩み寄りが見られないまま、時間切れとなった。今回の会合では、打開の糸口をつかめなかったが、同様の状況が続けば、今後の交渉も難航は必至だ。 【写真】プラスチックによる汚染を規制する条約策定に向けた政府間交渉委員会の会場に設置されたクジラの模型 ◇条文、詰め切れず 欧州連合(EU)や、海洋プラ汚染の被害を受けやすい島しょ国などはプラの生産量を削減するため、世界一律の目標を定めるべきだと提起。会合では、島しょ国から「後世に残る廃棄物は多くの国で大きな問題となっており、条約策定では、さらに野心的になる必要がある」(南太平洋フィジー)と、強い規制を求める声が出た。これに対して産油国は「解決すべき問題は汚染であって、プラ自体ではない」(サウジアラビア)として、譲らなかった。 こう着した状況を打開しようと、中米パナマは、プラ製品の削減に向けた世界目標を定め、各国がその達成を目指して取り組む案を公表した。EUの考え方に近いもので、100カ国以上が賛同し、議論の前進を期待する声も出た。 しかし、対立が解けることはなかった。バジャス議長が公表した草案では、生産規制をする選択肢と実施しない選択肢を併記。複数の選択肢を示すことで、妥協点を見いだそうという狙いだったとみられるが、実際には「歩み合うどころか主張は両極端になった」(交渉関係者)のが実態だ。 草案では、生産規制以外でも、各国の対立を反映し、複数の選択肢が残ったり、文言を詰め切れず保留する意味合いで括弧付きで表記されたりする条文が目立った。プラ汚染対策に取り組む途上国などに向けた資金支援を巡っては、専用の基金設置を求める途上国と、既存の基金の活用を求める先進国が対立。結局、双方の考え方が括弧付きで併記されるにとどまった。 ◇日本、目標設定案は支持せず 日本は交渉に当たり、条約の実効性を担保するため、なるべく多くの国が参加する枠組みづくりを重視した。一律の生産制限ではなく、プラの製造から廃棄・リサイクルに至るライフサイクル全体での対策を一貫して主張。各国の意見の隔たりが大きい中、「橋渡し役として貢献したい」(政府関係者)と意気込んできた。 一方、生産規制に関して世界目標を設定するパナマ案については、「数値目標ありき」(別の政府関係者)の側面があるとして、支持を見送った。国内への影響や、途上国の発展を妨げる恐れがある点を踏まえた。パナマ案への賛同が国際的に広がっただけに、日本が今後の交渉でどのようにリーダーシップを発揮するかが問われる。(釜山時事)