ラグビーW杯3連覇に死角なし?! NZがV候補の南アを23-13で撃破し予選プール無敗記録守る
負けた南アフリカ代表のフッカー、マルコム・マークスは言う。 「ニュージーランド代表のアタックは質が高く、我々の弱みを突いてきたところがあった」 後半にはスクラムでもニュージーランド代表の対応力が光る。8対8の押し合いでは立ち上がりから南アフリカ代表が好プッシュを連発も、対するニュージーランド代表は後半に入ると、最前列のメンバーを次々と交替させた。 後半開始早々の1本をやや遠めの間合いで組んで南アフリカ代表の反則を誘い、前半との違いをのぞかせる。さらに17―13と迫られていた26分には、敵陣中盤右の1本でまとまりを示す。塊の全体が右に流れて南アフリカ代表側は崩壊。まもなくニュージーランド代表がペナルティーキックを獲得し、モウンガがペナルティーゴールを決めて20-13とリードを広げた。 最前列のマークスは悔やんだ。 「少し(相手の組み合う瞬間が)遅いというところもあったかと思いますが、タフなスクラムでした。彼らにクオリティの高いセットピースをされたので、来週から修正しなければならない」 最後は南アフリカ代表の反則もかさみ、ニュージーランド代表は10点差での貫録勝ち。 いくつかの局面では南アフリカ代表のフィジカリティに気圧されながら、予選プール内での勝ち点を一切与えなかった。 今大会では、4つある予選プールの上位2チームずつが、決勝トーナメントに進める。予選プールBで世界ランク上位を争うのはニュージーランド代表と南アフリカ代表だけに映るが、それがこの試合を落としてよい理由には決してならない。 特にニュージーランド代表には、これまでのワールドカップの予選プールで28連勝中。一度も負けたことがないという伝統がある。
前回の優勝も経験したスティーブ・ハンセンヘッドコーチは「ここで負けたら歴史が壊れます」と強調。 もし決勝トーナメントへ予選1位で進出すればプールCの1位がエディー・ジョーンズヘッドコーチ率いるイングランド代表の場合、両チームが準決勝で対戦する可能性が出てくる。このカードを「そこで勝ったチームが優勝」と、事実上の決勝戦と見る専門家も多い。しかし当事者のハンセンは、優勝へ向けての具体的なプランなど言わない。あくまで一戦必勝の構えだ。 「全試合を決勝と思って戦う」 かたや黒星のマシー・エラスムス監督は「まだまだやれます」。両雄が順当に勝ち上がるとして、次にニュージーランド代表とぶつかれるのは同会場での決勝戦。敗軍の将はこうも語った。 「きょうはハーフタイムで3―17。ただし我々はニュージーランド代表から50点取るだけの力もある。ここから、決勝へ向かうようにしていきます。このプール戦で勢いを作って(決勝トーナメントへ)入りたい」 世界最高峰の大会が開かれることで、列島のファンは一級品のラグビー選手たちに触れられる。 ニュージーランド代表ロックのサム・ホワイトロックは、身長202センチという長身ながら自陣22メートルエリアでの地上戦でターンオーバーや反則の誘発に繋がるジャッカル(接点で相手の球に絡むプレー)を連発。大きく駆け戻ってのタックルで光ったモウンガとともに、「スクランブル(緊急時の)ディフェンス」でハンセンヘッドコーチを喜ばせた。 一方で南アフリカ代表のウイングのチェスリン・コルビは、身長170センチと一線級にあっては明らかに小柄なのに、ハイボールの競り合いで強さを発揮。ジャンプのばね、球と相手の間に手を差し込む間合いなどに長け、捕球後もすいすいと前に進める。小さくて強くて速くて賢い。 今回はニュージーランド代表の対応力が上回り、死角なき優勝候補の存在感は示した。だが、南アフリカ代表の勇敢な防御も終盤まで途切れなかった。 (文責・向風見也/ラグビーライター)