核保有国インドの国父像は、戦争被爆地の原爆資料館近くにふさわしい? ガンジー像巡る広島と長崎の対応
長崎市が、インドから寄贈の申し出を受けたガンジー像を原爆資料館の入口近くに設置する方向だ。 【写真】腹痛で作業を休んだ自分は生き残り、同級生は全員亡くなった。 親友の母親にかけられた言葉に絶句「何で生きているの」。 被爆60年経て「伝えなくては」と決意、親友の遺品を前に広島で語り続ける
ガンジーは非暴力・不服従の象徴だが、ガンジーを国父と位置付けているインドは大量の核兵器を保有している。 広島市は既に、昨年5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の際、ガンジー像を平和記念公園近くの緑地に設置した。 広島と長崎では戦争という国策に動員された末、何十万もの人が核兵器の犠牲になった。彼らを悼み、核なき世界を誓う特別な場所の近くに、核保有国の国父像を設置することに、違和感が拭えない。 幸いにも、長崎市には非暴力・不服従の象徴であるガンジーにふさわしい別の歴史的な名所がある。長崎市には、設置場所を再検討してもらえればと思う。(共同通信長崎支局長・下江祐成) ▽眼鏡橋付近に居場所なく… 事の発端は今年2月。長崎市は、インドと交渉した結果、多くの観光客の写真スポット「眼鏡橋」近くにガンジー像を設置することになったと発表した。 これに対して、街のシンボルとして眼鏡橋を誇りに思う地元住民らが「歴史ある地区にそぐわない」と待ったをかけたのだ。
眼鏡橋は現存最古のアーチ型石橋の一つ。約400年前に中国江西省から渡来した高僧「黙子如定(もくすにょじょう)」が架設したが、インドとの直接的な関係はない。 元々、インドはガンジー像の平和公園への設置を希望していた。だが長崎市は「平和公園に個人像設置は認めていない」と代替地を検討。人通りが多く「米軍による当初の原爆投下目標地点に近い」という平和のメッセージもある眼鏡橋付近を提示し、インドと合意していた。 中国との縁が深い眼鏡橋では、住民に反対され居場所がなかったガンジー像。さまよった末、平和公園の区域外という理屈もあり、原爆資料館近くのロータリーに設置される方向だ。 ▽北朝鮮やイスラエルと同様 筆者には釈然としない気持ちと、もったいないなという思いがある。 釈然としない理由は、ガンジーは非暴力の象徴ではあるものの、インドは大量の核兵器を保有しているからだ。インドは、イスラエルや北朝鮮と同様、核拡散防止条約(NPT)の枠外で核を保有した国だ。