【千利休の末裔が語る“いつも感じのいい人”の習慣】「ご縁」を大切にする人は、人づきあいがうまい
人間関係に悩んだ時、立ち返るべき思考習慣について、千利休を祖とする茶の湯の家に生まれ育った茶人の千 宗屋(せんそうおく)氏は、「お互いを尊重し譲り合う謙譲の精神を基本とすべき」と言う。今秋、人づきあいとふるまい方を説いた『いつも感じのいい人のたった6つの習慣』を上梓した千氏が語る短期連載。今回は、日本社会が培ってきた「ご縁」について伺ってみた。【全6回の第3回。第1回から読む】 【写真】千利休の末裔である著者の千 宗屋氏
人脈の財産である「ご縁」「粗相がないよう」「不快にさせないよう」相手を思いやる
ご縁を大切にする人は、出会いや人づきあいを大切にする人だ。 「ご縁の重なりが自分自身を形成し、大きく成長させてくれます。すなわちご縁をつなげばつなぐほど、チャンスはめぐってくるとも言えるのではないでしょうか。いわば、ご縁は人脈の財産なのだと言えます。人間は一人では生きていけません。さまざまな人の支えによって今の自分ができあがっています。 人間関係をつなぐご縁は、実はマナーや作法といったものと密接につながっています。ご縁に感謝し、人間関係を大切にする思いから、相手に『粗相がないよう』『無礼にならないよう』『不快な思いをさせないよう』という行動が生まれ、その結果できあがったのがマナーや作法なのです」(千氏、以下同)
人間関係の誤解やトラブルを避けるための潤滑油としてマナーや作法は存在する
茶の湯では、さまざまな作法、ルールが決まっている。 「お茶に親しんだことのない方からすると、『茶碗はどっちに何度回すのか』といった細かい決まりに縛られた世界に見えるかもしれません。けれど皮肉なもので、そもそも茶の湯とは、室町時代の身分制度という厳格な決まりごとを超えて、個人と個人の心が直に交わるために、多くの作法や決まりごとをぎりぎりまでそぎ落としていった末にできあがったものなのです」(千氏) 現代に生きる私たちにとって、作法やマナーというのは、人と人とのコミュニケーションを円滑にするためにある。人間関係の誤解やトラブルを避けるための潤滑油として、マナーは存在するのだ。
とりわけ、深く社会の「ご縁」と結びついているのが「冠婚葬祭」
冠婚葬祭とは、人が生きていく上で遭遇する四大儀礼を指す。 「冠婚葬祭という言葉でくくられるさまざまな儀礼こそ、最も人間関係に深く結びつき、しきたりとしてのマナーが問われる場面ではないでしょうか。なぜなら、敬意や感謝、思いやり、清浄、ご縁……といったすべての基本の要素が含まれているからです。冠婚葬祭それぞれに、その地方ならではのしきたりがあったり、家に伝わる方針が存在したりもするでしょう。 家族や親族だけでなく、おおぜいの人が関わる儀式でもあるので、よけいにその場にふさわしいふるまいや服装、正しい作法というものが気になります。これを窮屈ととらえ、時代と共に儀式を簡素化してきたのが現代です。結納は省略し、結婚式は行わないか親族のみで、葬式は家族葬で、といった具合です。核家族化が進んだ現在では当然の流れかもしれませんが、単に合理的でないから、手間がかかるから、といった理由でなくしてしまうのは、残念なことだと思うのです」(千氏)