ジャンプ作品なのに表紙が“花一輪”。担当が「編集部に衝撃が走った」と語る、マンガ『夏の終点』作者の素顔は?
目だけで恋心が伝わるように描いたシーン
――『夏の終点』で、特に気に入っているシーンは? 西尾 1話目最初の4ページくらい、すごく気合が入ってます。夏川さんの表情は何回も描き直しました。目だけで恋心がわかるようにしたいと思って。電車の中もはじめはもっと描きこんでいましたが、違うなと思って描き直したり。 ――モノローグはないけれど、感情が十分伝わってきます。 西尾 こういう表情の描き方は池辺葵先生の影響が大きいですね。あと、気に入ってるのは……場面転換で、夏川さんの友達がいきなり夏の雲とともに登場するところ。これ、うまいですよね、オレ(笑)。 ――描きこみの多い背景があるかと思えば大胆に余白があったり。人物に寄った画面からロングになったり。画面の演出に、心が揺さぶられます。 西尾 場面転換でちょっとびっくりしてもらいたいという意図はありますね。 ――これから描いてみたい作品の構想は? 西尾 描きたいものはコロコロ変わるんですけど、今は教会とか聖堂を描いてみたいです。シスターの禁じられた恋とか……。 ――描きたい情景からイメージをふくらませていくんですね。今、マンガ以外で興味のあることは? 西尾 最近レトロなフィルムカメラを買ったので、それで写真を撮ってみたいなと思ってます。 ――作品を描く上で大事にしたいことを教えてください。 西尾 説明的にならないことでしょうか。セリフもできる限り「削る」というよりは……そっと伝わるように。絵的なものもそれ以外の表現にしても引き算を心がけて、読み手の想像力を働かせるように描きたいです。それで、人の心に残るものを作れたらいいなと思います。
粟生こずえ