【コラム】最初から最後までヒーローだった小久保玲央ブライアン、チームを支えた守護神の涙 | AFC U23アジアカップ
振り返れば、初戦の中国戦でヒーローになったのも小久保だった。 チームは幸先よく先制点を奪ったが、早い時間帯に退場者を出して数的不利の展開になった。どう考えても苦しい状況に追い込まれていた。ただ、そこから相手の猛攻に対して小久保がビッグセーブを連発。難しい時間帯を守護神のセーブでしのいだことで、初戦から勢いのつく勝利を奪うことになった。 この勝利を皮切りに優勝までの道のりが始まったのだが、小久保はこの中国戦の勝利によってチームの力に確信を持ったのだという。 「このチームで絶対にアジアを取れるでしょとなったのは中国戦から。一人少ない状況で勝てたのを後ろから見ていて『このチームなら絶対に優勝できる!』と思った。自分個人というより、チームのことを後ろから見ていて、覇気だったり、そういうのが自分にも伝わってきました」 結果、チームはグループリーグを2位で突破すると、緊張感のある決勝トーナメントでは難敵たちを打ち破ってパリ五輪の出場権を獲得。そして最後には、2年前に同大会で敗れているウズベキスタンにリベンジを果たしてアジア王者に輝いた。 「中国戦をはじめとしていろいろな苦しい戦いをしてきた中で、優勝で終われたのでチームとしても個人としても嬉しいです」 ここからパリ五輪の18人枠に向けたサバイバルがスタートすることになるが、「ポルトガルに帰ってどれだけ試合に絡んでいけるか」としつつ、「まずこのチームは今日で終わりというところで、みんなと最後まで喜び合いたい」と笑顔を見せた小久保。チームを支えた守護神は、最初から最後までヒーローだった。 文・林遼平 埼玉県出身の1987年生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、フリーランスに転身。サッカー専門新聞「エルゴラッソ」の番記者を経て、現在は様々な媒体で現場の今を伝えている。
林遼平