地方議員のなり手不足打開に新たな道筋となるか 岡山県美咲町議会が現職議員を講師に養成講座 模擬議会で一般質問に立った受講者は「見えにくかった議員の仕事が具体的に理解できた」
全国の地方議会で議員のなり手不足が深刻化する中、岡山県美咲町議会が来年4月の改選前に開いた議員養成講座「議員アカデミー」が12日、全日程を終えた。現職議員自身が講師を務め、人材を育てる異例の試みは受講者に好評で、局面打開に向けた新たな道筋となるかもしれない。 「農業を取り巻く環境は厳しい。獣害対策など支援策は」「介護人材確保に向け、外国人を受け入れる方針はあるか」―。 計6回の講座の最終回は模擬議会。“議員”として受講者4人が議場で一般質問に臨み、執行部役の町議を相手に町政をただした。 防災対策などを尋ねた受講者(57)=同町=は「緊張したが、政策決定の流れが分かった。講座を通じて見えにくかった議員の仕事が具体的に理解できた」と語った。 全国町村議会議長会の調査では、2019年5月~23年4月の4年間、全国926町村で議員選挙が行われ、27・4%の254町村は無投票で当選者が決定。うち31町村は定数割れとなった。 美咲町議会にとっても人ごとではなかった。前回21年4月の町議選。2月の立候補予定者説明会は定数14に13陣営しか出席せず、告示直前まで無投票がささやかれた。最終的に15人が立候補。05年の新町発足後初の無投票となる事態はぎりぎりで免れた。 強い危機感を抱いた町議会は改選後、全議員で構成する議会活性化特別委員会を設置。なり手不足の解消策や議員定数、報酬の在り方などを協議した。 そこで目を付けたのが23年に「議員の学校」を開き、受講者から立候補者を輩出して2期連続の無投票から脱した北海道栗山町議会の取り組み。視察を重ねて美咲町での導入を決めた。 松島啓議長は「行政のチェック機能を果たし、持続可能な議会とするためにも、多様な民意を反映できる議員を育てる必要があった」と振り返る。 地方政治に詳しい日本大の林紀行教授(政治学)は「議会と住民の距離を縮める有意義な取り組み」と評価。「内容を高度化し過ぎず、政治に対する疑問を丁寧に解消しながら継続すれば効果が期待できる」と話す。