AIで無料法律相談〈ロボット弁護士〉を開発した起業家が語る「AI×法務」の新時代
いつでも無料で法律について話が聞けるAIサービス〈ロボット弁護士〉を開発した株式会社Robot Consulting代表の横山英俊氏。投資家としてもAIビジネスに注目しているという横山氏に「AI×法務」の未来について話を聞いた。 「私が〈ロボット弁護士〉を思いついた背景には“学習させたデータをほぼ忘れない”というAIの特性に着目したことが大きいです。六法全書をAIに学習させれば、弁護士がすべてを暗記しているわけではない法律の膨大な知識にも対応でき、網羅的な質問に答えられるようになるのではと考えました。弁護士への相談は一般的に敷居が高く、依頼前に相談することすらためらう人も多いですが、無料で、土日祝日でも24時間いつでも気軽に会話できるシステムがあれば、法律相談のニーズは広がり、これまであきらめていた人々が新たな市場になるのではないかと思いました。 現在、弁護士に寄せられる相談の多くは企業法務関連ですが、近年では働き方の多様化に伴い、個人事業主やすき間バイトをする人々からの法務相談も増えています。個人レベルでの商標や契約トラブルが増加しており、デジタル化が進む中で、AIが法務相談の一部を担う時代が到来する可能性は高いと言われています。 しかし、日本では弁護士バッジを持つ者以外が法的サービスを行うことはできません(非弁行為の禁止)。そのため私たちは法律の範囲内で、無償で提供できるサービスを展開し、必要に応じて弁護士に引き継ぐ形にしています。弁護士にとっては集客の機会になるわけです。 約4兆円のリーガルマーケットがあるアメリカでは既にAIを活用した法務サービスが普及しています。〈ロボット弁護士〉のようなサービスがあるんですが、駐禁の異議申し立てから離婚訴訟まで、AIが訴状や届け出を生成してくれる。これは確か学生起業家が立ち上げたものなんですけど。私たちも現在、アメリカでIPO(※6)申請を進めており、将来的には各国の法律を学習したAIが国際的な法律家ネットワークと連携するアプリケーションの開発を目指しています。 AIがさまざまな分野で普及するにつれて、自動運転などの分野でも法律が変わる可能性があり、法的サービスに対する規制も変わっていくかもしれません。今まで専門家しかできなかったことが、AIを活用することで誰でもできる時代が近づいているのです。 私が投資家として一番に注目しているのは、半導体やデータセンターなどAIに不可欠なインフラ部分ですが、ChatGPTのようなLLMを活用したスタートアップにも関心があります。ただしサービス化する際には、ハルシネーション(※7)への対策が重要です。〈ロボット弁護士〉では法律専門家による監修を加えることで誤った情報を修正しつつ、開発リソースを軽くし、大量の情報を処理したり多国籍な言語に対応できるといったLLMのメリットを活用しています。AIが専門家の役割を担う範囲が広がれば、いずれ無人に近い会社経営なのに何十億規模の利益を出すような会社も生まれるかもしれません。 ちなみに、アメリカだと将来的な売り上げや事業性、株価といったPSR(株価売上高倍率)を見る傾向が強くて、日本とは時価総額の付き方がまったく違うんです。日本は外国人投資家比率が結構高くて6割ほどあるんですけど、このところ減少傾向にある。日本からも注目のAI企業が生まれることを期待したいですね。AIビジネスを考えている方は、まだDXが進んでいない分野、例えば教育などに注目してみるのもいいかもしれません。AIビジネスが盛り上がる一方で、アナログにしかない価値も伸びていくと思うので、そこにビジネスチャンスを見出すのもありだと思います」