2015年のネットメディアは、伝統的な紙メディアを駆逐できない
インターネットの専業メディアが出現して15年ほど経つが、ネット専業メディアは、伝統的な紙メディアのような独自の取材力を身につけられないでいる。そんななか「東洋経済オンライン」の佐々木紀彦編集長がネット専業メディアに移籍し、関係者の間で大きな話題になった。一方で、より協力な取材ができる紙メディアに移籍した記者・編集者もいる。優秀な編集者の流動化が始まったと言えるかもしれないが、現状ではネットメディアは取材力で紙メディアを駆逐できないだろう。
優秀な記者・編集者が移籍する先は?
かつては1000万部を誇った『読売新聞』、ここ数年急激に部数を落とし、934万部程度にまで落ちこんでいる(ただし、いまなお世界最大部数である)。「国民雑誌」と呼ばれる『文藝春秋』は、総合雑誌では独走的なポジションに立っていても、2008年の4月から9月にかけてのABC部数は61万9,000部だったものが、 昨年の7月から9月にかけては49万5,000部となっている。 そんな「紙メディア離れ」の中、『週刊東洋経済』『会社四季報』などを発行する東洋経済新報社にて「東洋経済オンライン」の編集長を務めていった佐々木紀彦氏が、インターネットメディアである「ニュースピックス」へと移籍し、『朝日新聞』でも取り上げられた。欧米では優秀な記者・編集者が紙メディアからネットメディアに転身する動きが盛んであり、日本でもその流れは進みつつある。 昨年、同じ東洋経済新報社の別の記者の他社への移籍が、出版業界、あるいはジャーナリズム業界で話題になった。『週刊東洋経済』で雇用問題や労働環境の問題を取り上げており、『雇用融解』『融解連鎖』(ともに東洋経済新報社)などの著作でも知られる風間直樹氏が、朝日新聞東京本社特別報道部に移籍した。 『朝日新聞』は、インターネットでの展開に積極的ではあるものの、旧来型の「新聞」という紙メディアが強固な経営基盤となっている。かつての800万部を超える部数を誇る状況ではないものの、約704万部の部数を持っている。 東洋経済新報社時代には骨太の調査報道を行っていた風間氏は、インターネットメディアには行かず、雑誌よりもはるかに記事にお金がかけられる新聞に行った。なお、東洋経済新報社は『週刊東洋経済』『会社四季報』などのために多数の正社員記者を抱えており、雑誌メディアではトップクラスの自社取材体制を整えている。しかし、朝日新聞社の取材体制は、それをはるかに上回る。 風間氏は、昨年11月9日朝刊(東京本社版)の一面トップ記事「制度外ホームで『拘束介護』 都内の高齢者マンション 約130人、体固定や施錠」の記事で朝日新聞記者としてのデビューを飾り、その後もこの問題を追い続けている。