山陰と山陽結ぶ、幕末志士も歩いた歴史の道 「萩往還」伝えるやまぐち語り部の会
山陰と山陽を結ぶ街道萩往還。山口県日本海側の萩市から瀬戸内海側の防府市まで、ほぼ直線で縦断する約53キロの道は吉田松陰など幕末の志士が往来し、史跡が多く残る。その歴史を伝えるやまぐち萩往還語り部の会の白上貞三さん(77)は「当時の人々に思いをはせることができる。歴史を知ればこれからが見えてくる」と魅力を語る。(共同通信=簑口典華) 萩往還は江戸時代、参勤交代のために整備された。竹林や急勾配の山道を進む街道沿いには人々が足を休めた茶屋跡や、藩政を巡る意見対立で武士が命を落としたことを伝える碑などがある。 2月23日、萩から宿場町・明木まで行われたツアー。萩の町の見納めとなり多くの人が涙を流したとされる涙松跡で、会の黄色い法被姿の白上さんが「安政の大獄で処刑された吉田松陰先生は、故郷に戻ることはないだろうと別れを惜しむ歌を詠みました」と解説。「松は当時のものですか」など率直な質問が相次いだ。「勉強になったとの声がうれしい。歩ける限り活動を続ける」と意気込んだ。
語り部の会は2011年に設立。自然や史跡が多い萩往還を目当てに全国の都市部や海外からも客が訪れ、年約2千人を受け入れる。ガイドは60~70代と年配が多く、歴史の伝承のため若者にも参加を呼びかける。 米紙ニューヨーク・タイムズの今年行くべき旅先に山口市が選ばれ、県全体にも注目が集まる中、外国人観光客にも対応できるよう、会も語り部向けに語学研修を行うなど準備を進める。 松井邦昭会長(75)は「萩往還の素晴らしい遺産と歴史を多くの人に感じてもらいたい」と語った。 会への問い合わせは083(920)3323、平日午後1時~午後5時。ツアーは2人から実施。