【解説】アメリカ大統領選 支持率僅差の大接戦…その背景は?
■テレビ討論会と銃撃事件がトランプ氏の追い風に
夏前にはまたトランプ氏が徐々に支持率を伸ばしていく時期がありました。一方でバイデン大統領が支持率をガクンと下げているんですが、その理由がトランプ氏とのテレビ討論会でした。 民主党 バイデン大統領(6月27日) 「私たちがやるべきこと…“医療保険”を打ち負かした」 共和党候補 トランプ前大統領(6月27日) 「そうだ、彼は“医療保険”を打ち負かしたんだ」 テレビ討論会でバイデン氏は、「コロナを打ち負かした」というところを言い間違えてトランプ氏に揚げ足を取られたのです。声がかすれたり、言葉に詰まったり、討論会は終始、精彩を欠きました。その後も挽回すべきところ、ゼレンスキー大統領をプーチン大統領と言い間違えたり、身内のハリス氏を宿敵のトランプ氏と呼んでしまうといったことが続きました。
さらに7月13日に全米を揺るがす大事件が起きました。トランプ氏の銃撃事件です。激戦州のペンシルベニア州での演説中に銃撃を受けて右耳を負傷しました。血を流しながらこぶしを突き上げるトランプ氏にすさまじい歓声が会場でわき上がりました。 結果としては完全にトランプ氏に対する追い風となりまして、支持率ものばしました。事件から6日後、7月19日に支持率が3.1ポイント差に広がりました。(トランプ氏47.8% バイデン大統領44.7%)不屈の強いリーダーという姿をアメリカだけでなく世界中に見せつけた結果だと思います。 万事休すということで、バイデン大統領は選挙戦からの撤退を表明。そして後継者にハリス氏を指名しました。
■トランプ氏対ハリス氏 新たな構図で支持率は?
トランプ氏対ハリス氏という新たな構図になったのが7月末です。トランプ氏が支持率で逆転をされたのは8月5日ですが、この翌日の6日に民主党はハリス氏を正式に大統領候補に指名しました。 その後は夏から秋にかけてだいたい2ポイントほどハリス氏が支持を伸ばす一方で、少しトランプ氏が水をあけられました。 この先に何があったのか。 共和党候補 トランプ前大統領(9月10日) 「(移民たちは)猫を食べている。そこに住む人々のペットを食べているんだ。これがこの国で起きていることだ」 ハリス氏とのテレビ討論会で、トランプ氏が不法移民の問題を追及する中で「移民が住民のペットを食べている」と全く事実とは異なる発言をしたのです。差別発言は絶対に許されませんが、トランプ氏は不法移民たちがアメリカ治安を悪くしているとか、働く場を自分たちから奪っていると主張していて、今の政権でその不法移民対策を担当しているのはハリス氏ですから、その原因を作ったのは彼女なんだと繰り返し強調してきました。 大統領選でもう1つ言えるのは、いつも最後の最後は「目先の経済」が重要な選択基準になります。トランプ氏が訴える不法移民への危機感というのは、雇用不安とか止まらない物価高とかに毎日直面している国民にすれば、「体感」に一定程度響いて浸透している。そういう見方になります。 それを示すかのように10月26日には、またトランプ氏がハリス氏を逆転しました。27日にはトランプ氏の集会でコメディアンが「プエルトリコはゴミの島」と移民をやゆして差別的な発言をした後も、支持率に大きな変化はなくて、もつれながら今に至っています。 アメリカの抱えるさまざまな課題がこの戦いの中で議論、論戦になってきたことがわかります。その集大成としてのアメリカ国民の1票、1票の選択がいよいよ示されることになります。 (日本時間2024年11月5日午後4時半ごろ放送 news every.より)