センバツ高校野球 久我山が春初勝利 ピンチしのぎ、逃げ切る /東京
第94回選抜高校野球大会第4日の22日、1回戦に臨んだ国学院久我山(杉並区)は有田工(佐賀)を降し、センバツ出場4回目にして初勝利を挙げた。試合は雨天により3時間半遅れで開始。先発した成田は時折ピンチを招きながらも落ち着いた投球で完投し、打撃でも2打点と活躍した。1番斎藤と5番大野の適時打も合わせて計4点を挙げ、2点差で逃げ切った。久我山は2回戦(大会第7日第3試合)で高知と戦う。【小林遥、浅野翔太郎】 久我山は一回、幸先良く大野の適時打で先制し、応援スタンドも早速沸き立った。母美和さん(49)は「昨秋は都大会の準決勝以降と神宮大会で(ヒットを)打てず、今センバツ大会も『スタメンで出られるかどうか分からない』と言っていたので、活躍できてほっとしている。『良かったね』と言ってあげたい」と語った。 三回は、6番成田の適時打で1点を追加。「寿命が縮む思い」で観戦していたという母律子さん(49)は「大事な場面で打ってくれて良かった。波がある子だから心配していたけど、今日は大丈夫そう」と笑顔をみせた。 更に六回には、斎藤の適時打で3点目。母智恵さん(53)は「プレッシャーをかけないように家では野球の話をしないようにしているけど、心の中では、たくさん打って暴れ回ってほしいと願っている」と明かした。 ピンチの場面には、スタンドの応援団もハラハラしながら見守った。七回に相手に2死満塁とされ、捕手の吉川がマウンドの成田に駆け寄って声をかける場面もあった。この時、吉川は「打者がクリーンヒットしたわけじゃない。不運な形のヒットだから成田ならいける」と伝えたという。それで「冷静になった」という成田は「今日一番の変化球」で打者を打ち取ってピンチを脱した。 試合後、久我山の応援スタンドからは選手たちに祝福の大きな拍手が送られ、佐藤誠博教頭の目には涙がにじんでいた。スタンドで応援していた野球部員の平川優希さん(3年)は「いつも練習でやっていることが出せていた。次もグラウンドの選手たちの後押しができるように応援を頑張りたい」と意気込んだ。 ◇演奏できる喜び ○…「甲子園は応援の聖地なので楽しい」。4月で3年になる国学院久我山吹奏楽部部長の坂本心瑚(ここ)さんは、晴れの舞台で演奏できる喜びを語った。新型コロナの影響で1月下旬まで長く部活動を中止していたが、センバツ出場決定を機に再開した。坂本さんは「練習時間は少なかったが、部の団結力は高まった。野球の試合での演奏は普段より人に届いていると感じやすい。選手の活躍につながれば」と仲間と演奏に力を込めた=写真・小林遥撮影。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇緊張にも光る攻守 国学院久我山・斎藤誠賢中堅手(3年) 尾崎監督から「マイペース」と評される1番打者。そんな斎藤も22日の試合後は「すごく緊張したし、ここが甲子園だと改めて感じた」と吐露した。 三回の守備、相手の1番打者の飛球に追いついてアウトにし、さらに一塁への好送球で飛び出していた一塁走者も打ち取るファインプレーをみせた。「相手の各バッターの打ち方を事前に勉強していた」というチームの準備が生きた。 昨年11月、元プロ野球選手のイチローさんが指導に訪れた際、左打者の打席でのルーティンを質問した。そこでイチローさんから「打席でバットを左中間方向に差し出し、その左側の世界だけを見て打つ」と教わった。 22日はその助言をもとに打席に立ち、左前適時打を放った。試合後、「あのポーズのおかげで外に打つという意識を強く持てた。イチローさんの教えがあって出せたタイムリー」と振り返る。次戦も、その教えを胸に挑むつもりだ。【小林遥、加藤昌平】 〔多摩版〕