父は箱根駅伝98年Vレジェンド主将“神奈川大の申し子”中野蒼心が伯父の剛監督とシード権狙う
第101回箱根駅伝(来年1月2、3日)に2年連続55回目の出場を決めた神奈川大には、ある伝統を受け継ぐ選手がいる。3年生の中野蒼心(そうしん)は、父が同大学の「黄金時代」を築いた幹生(よしお)さん(49)で、連覇した1998年には主将を務め、7区区間賞にも輝いた。その父の兄は、今年から指揮を執る中野剛・新監督(51)。まさに“神奈川大の申し子”は、伝統のプラウドブルーを受け継ぐ中野一家から3人目の箱根ランナー誕生を実現させる。 27年の時を経て中野家の“箱根物語”が再び動き出そうとしている。父は、4年時に7区区間賞を取り、初の連覇に導いた伝説の主将。さらに伯父は神奈川大の元箱根ランナーで、現監督という駅伝一家。自身は過去、3大駅伝を走ったことはないが、ついに登録され、大チャンスが到来した。「憧れていた舞台。夢でずっと掲げてきた。絶対にかなえたい」。懸ける思いは誰よりも強い。 幼い頃はトップ選手の情報を教えてくれる「陸上に詳しいおじさん(笑)」だと思っていた伯父が今年から指揮官に就任。一方、監督にとっても「陸上オタクの坊主」だったおいっ子が、今では副主将としてけん引するまでにたくましく成長。「この1年よく頑張っている」と努力を高く評価する。 中学生の頃に書いた未来年表。中野は大学入学の年齢に「神大」と書いた。いざ進路を決める時も「迷わず一択」。偉大な2人の背中を追った。小学生の時、祖父母の家にあったビデオで初めて父の走る姿を見た。「走り方と顔が似てんなあ」とぼんやり見ていたというが、今思うと「尊敬しかない」。一番の憧れの存在だ。 2年生の春頃はトラックで全く結果が出ず「やめたい」と苦悩。マネジャーになることも考えた。そんな苦しむ息子を父は褒めてくれた。「陸上で結果が出ないからといって蒼心の価値が下がるわけじゃない。後悔ないように」。心が救われた。周囲の助言もあり、その年の夏頃からロード専念を決断。多い時は1週間で220キロを走り込んだ。結果が出始め、暗闇から抜け出した。 本戦に向けては「父が区間賞を取った7区を希望」と照れ笑いする。父からも「7区は何でも知ってるから聞いてくれ!」と言われているという。だが、強みを最大限に生かすならば得意な単独走が予想される4区や9区とにらむ。「中野家3人目のランナーになり、シード権獲得に貢献したい」。伯父とともに鍛えた走りを箱根路で父の脳裏に焼き付ける。(小林 玲花) ◆中野 蒼心(なかの・そうしん)2003年8月25日、21歳。神奈川・平塚市出身。三浦学苑高を経て、神奈川大人間科学部3年。小1からサッカー、小5から本格的に陸上を始める。中高時代は全国大会の経験なし。ハーフマラソンの自己ベストは1時間3分27秒。同大学出身の父・幹生さんは1998年の箱根駅伝で連覇に貢献。現在は松蔭大女子駅伝部監督。169センチ、50キロ。 ◆神奈川大 1948年創部。箱根駅伝は前身の横浜専門学校時代を含め、通算55回出場。97年に初優勝し、98年に連覇を達成した。96、97年度には全日本大学駅伝も連覇し、黄金時代を築いた。出雲駅伝は97、2002年の2位が最高。長距離部員は選手41人、学生スタッフ18人。練習拠点は横浜市。タスキの色はプラウドブルー。主なOBは男子マラソン日本記録保持者の鈴木健吾(富士通)。
報知新聞社