孫悟空、なぜ世界で人気? 今度はゲームソフト「黒神話:悟空」が世界ランキングの1位に
『西遊記』の孫悟空とその魅力とは、『ドラゴンボール』も世界でおなじみ
孫悟空は、中国で16世紀に完成した小説『西遊記』に登場する、人間の性質と能力を持つサルだ。如意棒を武器に活躍し、中国文学の中で最も愛される息の長いキャラクターのひとつになっている。 ギャラリー:想像力が生みだした 世界の怪物たち14点 誕生以来、洋の東西を問わず数々の映画、テレビドラマ、漫画、アニメ、ゲームなどで取り上げられてきた孫悟空。そして、中国製ビデオゲーム「黒神話:悟空」が世界ランキングをはじめ、12カ国で売上1位を記録した。新たに人々を引き付けている今、そのプロフィールと魅力をおさらいしてみたい。
孫悟空の物語の元ネタとなった巡礼の旅
孫悟空の物語の元になっているのは伝説ではない。唐の僧、玄奘(げんじょう)が天竺(インド)まで赴き、仏典を持ち帰ったという史実だ。西暦629年から16年をかけておよそ3万キロを踏破した玄奘の旅の記録『大唐西域記』は、中国人の想像力をかき立てた。明代中期にはこれを基にした小説『西遊記』が成立して、1590年代に出版された。 諸説あるものの、西遊記の著者は呉承恩とされている。呉は玄奘の旅をフィクション化し、玄奘のことを唐三蔵(三蔵法師)という架空の人物に仕立てあげた。そして孫悟空を含む3神仙を、唐三蔵の求法の旅にお供として従わせた。
孫悟空の誕生
孫悟空のモデルについての定説はないが、神話や伝説から借りてきたと考えられている。モデルの候補としては、中国神話に登場するサルに似た妖怪、無支奇(むしき)や、サルの顔を持つヒンドゥー教の神、ハヌマーンなどが挙げられる。 とはいえ、『西遊記』における孫悟空の誕生についてあいまいな点はなく、花果山(かかざん)の岩から生まれた。おそらく、ニホンザルを含むマカク属のサルのような見た目だろう。 仲間たちと花果山で暮らしていたサルは、ある日、滝を発見すると、滝つぼに飛び込み洞窟を発見する。仲間たちはその勇気ある行動を称え、岩から生まれたサルをサルの王として「孫悟空」と呼ぶようになった。
超絶能力では克服できないある事実
孫悟空には並外れた能力が備わっている。その1つが72通りに姿を変えられる変化(へんげ)の術だ。物理的な距離も、ものともしない。宙返り1つで数千キロを移動したという話がある。 孫悟空は、筋斗雲と如意棒を巧みに操る、優れた武術の使い手でもある。また、いたずら好きなところなど、サルを思わせるような性質も持っている。北欧神話に登場するいたずら好きの神「ロキ」、ずる賢いがどこか憎めない狐の「レイナルド」、ディズニー・キャラクターの「ブレアラビット(うさぎどん)」などを彷彿とさせるキャラクターだ。 だが、孫悟空は決して克服できない、ある事実に悩まされている。死だ。そこで彼は、不老不死の術を求めて世界をさまようことになる。 不老不死を求める孫悟空は、玉帝が支配する天界にたどり着き、宮殿の禁じられた場所に忍び込むなど、やりたい放題の狼藉をはたらく。特別な桃をむさぼり食い、玉帝の宴を台無しにしたこともあった。 権威を嫌う孫悟空は、自分と玉帝は同等であるとも主張した。玉帝から助けを求められた釈迦は、孫悟空を五行山に閉じ込めた。その後500年間にわたって山に閉じ込められた孫悟空を救ったのは、ある予期せぬ出来事だった。