法の「想定外」だった首長のパワハラ、条例で防ぐ…「つくること自体が抑止力になる」
自治体によっては、より透明性や実効性のある条例の制定を目指す動きが出ている。
自治体の課題を調査研究する一般財団法人「地方自治研究機構」の調査によると、ハラスメント防止条例を制定している自治体は9月3日時点で大阪府、福岡、長崎両県と61市区町村。多くがハラスメントの主体を議員としており、首長も対象にしているのは12市町となっている。
昇秀樹・名城大教授(地方自治論)は「予算や人事など権限が集中する首長は、職員との上下関係の中でハラスメントの主体になりやすい。条例をつくること自体、首長が自身の言動に気をつける抑止力になる」と指摘する。
18年に全国で初めて条例を施行した東京都狛江市では、当時の市長が女性職員2人に対し腰に手を回すなどのセクハラをしたと市の調査で確認され、市長は同年6月に辞職。市のハラスメント防止規則では市長は対象外だったため、議員提案で条例ができた。
今年6月に市長のパワハラやセクハラ行為8件が認定された福岡県宮若市でも、市長を対象にした条例の制定を検討している。
成蹊大の原昌登教授(労働法)は「大切なのは、組織内でハラスメントの防止や対応策についてしっかり議論し、ルールを作ることだ。条例は議会のチェックという外部の視点が入ることになり、選択肢の一つになる」と話す。