人が全然採用できない…人口激減の地方で起きている「深刻な現実」
なぜ給料は上がり始めたのか、経済低迷の意外な主因、人件費高騰がインフレを引き起こす、人手不足の最先端をゆく地方の実態、医療・介護が最大の産業になる日、労働参加率は主要国で最高水準に、「失われた30年」からの大転換…… 【写真】いまさら聞けない日本経済「10の大変化」の全貌… 話題書『ほんとうの日本経済 データが示す「これから起こること」』では、豊富なデータと取材から激変する日本経済の「大変化」と「未来」を読み解く――。 人口減少の最先端を行く日本でいち早く人口減少が進んでいるのは地方部だ。 人口減少が労働市場にどのような影響を及ぼし、経済の構造をどのように変えるのか。これを考えるにあたっては、都市圏の経済の状況を分析するよりも、むしろ地方経済で起きている事象を丁寧に把握することが重要である。 いま地方部で何が起きているのか。 中小企業を見てみると……。例えばある建設業では「、近年、労働条件の抜本的改善に力を入れている。他の建設業の企業例にもれず、長らく週休2日の実現が難しい状況にあったが、5年前までは100日程度だった年間休日数を段階的に121日まで増やし、週休2日を実現した」という。 〈「以前は土日に仕事することも多々ありましたが、いまは日曜日は完全休みで土曜日もほぼ出社はありません。 当時は同業他社でも年間休日100日は多い方だったのですが、他社が一気に増やしてきたのです。 このご時世、地元の高校に求人票をだすと休日数は非常にシビアに比べられます。私たちの時代は学生は初任給だけを見ていましたが、いまの若い人は休日の数を非常に気にしています。 少ないと真っ先に就職先の候補から外されてしまいますよ。人員確保のためにも、休みは増やさざるを得ません」〉(『ほんとうの日本経済』より) 発注者に事業者が選ばれる時代から、事業者が案件を選ぶ時代になっているという変化も起きている。 〈「今は人手不足で受注を取りたくても取れないという会社が増えています。 利益を見込めそうな工事は15社とかいきますが、そうでない案件は1社入札とかもあります。 たとえば橋梁の補修工事などは利益が出にくく、入札不調の工事がどんどん増えてきました。 最近は発注者から取ってくれという電話がかかってくることもよくあります。 建設会社が十分な人材を獲得できない中、事業者が案件を選ぶ時代に変わってきているのです。〉(『ほんとうの日本経済』より) ほかにも新聞配達を担う会社でも「年々従業員の採用が難しくなっていることから、従業員の報酬水準を引き上げている」という。 〈「配達スタッフの平均年齢は60代半ばです。最年長は86歳、80代前半の配達員も何人かいます。多くの配達員は20年選手、30年選手です。 昔は多数の若い学生さんがお小遣いを稼ぐためにアルバイトとして配達を手掛けていましたが、近年では若い方が減っているのに加え、新聞配達のような大変な仕事をやりたくないという人も増えていて、採用が非常に難しくなっています。 健康で元気な高齢者が多くなっているのは頼もしい限りです。ただ、現役世代が働くのとは違う配慮が必要ですし、いずれ働けなくなる日が必ず来ます。そうなれば事業の継続自体が難しくなるでしょう」〉(『ほんとうの日本経済』より) 地方企業の経営者の話から、地方経済において、経済の局面は明らかに変わってきている様子がうかがえる。 若い労働力が急速に減少している一方で、サービスに関する需要は堅調を維持している結果、労働市場の需給はひっ迫し、人手不足が深刻化しているのである。 〈人手不足の深刻化は企業の行動変容を促す。 近年、多くの企業で労働力の確保は経営上の死活問題となっており、そのためには否が応でも従業員の労働条件の改善を行わざるを得なくなっている。 そして、従業員の労働条件の改善は企業にとっては利益を圧迫する要因となっており、今後は生産性を高めるための取り組みを成功させなければ市場において生き残っていくことはできないと、経営者は危機感を強めている。〉(『ほんとうの日本経済』より) つづく「多くの人が意外と知らない、ここへきて日本経済に起きていた「大変化」の正体」では、失われた30年を経て日本経済はどう激変したのか、人手不足が何をもたらしているのか、深く掘り下げる。
現代新書編集部