J1磐田 引退表明したMF山田大記が残留に望みつなぐ千金PK弾「信じて蹴った」
◇明治安田J1リーグ 第37節 磐田2-1FC東京(30日・ヤマハスタジアム) 18位のジュビロ磐田はホーム最終戦でFC東京に2―1で競り勝ち、奇跡の残留へ望みをつないだ。後半32分、相手退場で数的優位となると、同35分にFWマテウスペイショット(29)が同点弾。さらに同44分、今季限りでの引退を表明しているMF山田大記主将(35)が決勝PKをねじ込んだ。8日の最終節は敵地で鳥栖戦。勝てば他会場の結果次第で残留をつかめる。 **** 波打つ鼓動を懸命に沈めた。後半44分、VARの末獲得したPK。磐田・山田は「人生で一番緊張した」。ボールをセットし、上げた視線の先にはサックスブルーに染まるスタンドがあった。「みんなの思いが決めさせてくれる。信じて蹴った」。助走から左足を一閃(せん)。ボールはGKの逆を突いてネットに吸い込まれた。地鳴りのようなヒロキコールに全身を委ねた。 前日の29日、ジャーメインに誘われ普段はしないPK練習に取り組んだ。エースから「どんな場面なら蹴る?」と問われ「プレッシャーのかからない所」と即答。だが“冗談”とは真逆の現実が待っていた。「自分が責任を背負う」。本拠最終戦で、これ以上ない10番の仕事を果たしてみせた。 幼少期から憧れた地元クラブでキャリアを全うした。14年夏から17年夏をドイツで過ごした以外は磐田一筋。「今でもふと目が覚めて自分がジュビロの10番を背負っていることが信じられなくなる。夢の世界にいる時間だった」。ドイツから帰国後は代表や海外への喪失感も抱えていた。だが当時の名波浩監督から「このエンブレムを胸に戦う以上何が何でもクラブのために戦ってくれ」と背中を押され、再び心に火をともすことができた。 引退の決断は10日前。今季は近年悩まされた故障もなく状態は万全だった。それでも「個で目の前の相手に勝てない。中心選手としてやっていくのは難しい」と14年のプロ生活に終止符を打つことを決めた。 役職は未定だが、今後もクラブに関わる予定という。泣いても笑っても残り1試合。残留するためには勝つことが最低条件で、柏と新潟の結果次第となる。「最高に幸せなサッカー人生」の集大成を飾る、最後のひと仕事が待っている。(武藤 瑞基) 〇…悩める助っ人が値千金弾だ。後半35分、FWマテウスペイショットがMF上原のFKに反応。頭で同点ゴールをたたき込んだ。「(距離が近く)相手も直接FKと思っていたかもしれない。(上原が)信じて蹴ってくれた」。得点は6月の東京V戦以来5か月ぶり。「苦しい時期も過ごしたが、日々の姿勢を示せたことはうれしかった」と笑みをこぼした。 〇…横内昭展監督が57歳の誕生日を白星で飾った。1点を追う後半18分、「ひっくり返してこい」と山田を投入。言葉通り10番が躍動し逆転に成功した。「言った通りにできる。大したもんだと思った」と最敬礼した。連敗は3でストップ。ヤマハでの白星は6月26日の東京V戦以来、約5か月ぶりだ。指揮官は「我々は必ず(J1に)残る」と最終戦に目を向けた。 ◆得失点差争いの場合 まず次節の結果で3チームの得失点差が並んだ場合、現時点では総得点で上回る磐田は残留。その上で柏とは、磐田が6点差勝利&柏が1点差負けなど合計7点以上になれば残留できる。新潟とは、磐田1点差勝利&新潟2点差負けなど同3点以上で残留となる。
報知新聞社