PK戦で相手7人目のキックをセーブし、応援席に向かって笑顔を見せる新潟医療福祉大・桃井（撮影・小林忠）

＜総理大臣杯・全日本大学サッカートーナメント：新潟医療福祉大0（5PK4）0筑波大＞◇12日◇準決勝◇いわスタ 　新潟医療福祉大（北信越1）はGK桃井玲（4年）の“宣言通り”の活躍もあり、筑波大（関東5）をPK戦で破って北信越勢初の決勝進出を果たした。スコアレスで突入したPK戦。守護神は先攻・筑波大のエースFW内野航太郎（2年）のシュートに反応して枠を外させる。その後は相手のキッカー4人目と7人目のキックを防ぎ、勝利の立役者となった。15日の決勝戦（いわスタ）は阪南大（関西6）と対戦する。 　　　◇　　◇　　◇ 　守り神が躍動した。0－0でPK戦に突入した瞬間、桃井は“自分の世界”に入り込んだ。先攻・筑波大エースのシュートコースを完全に読んでミスを誘うと波に乗り、後続の4、7人目のキックをセーブした。「PK戦は得意。今日は自分の日だな、と思いました」。好セーブ後はいずれも応援席に駆けつけた60人のチームメートに笑顔を送り、勝利決定後は雄たけびを上げながらガッツポーズで喜んだ。 　PKは運ではなく、実力－。22年度のインカレで決勝まで勝ち進んだ3回戦（22年12月18日、中京大）のPK戦でも勝利の立役者となっていた桃井は今大会前、「PKセーブのコツ」をこう明かした。 　「試合中の相手の動き、癖、プレースタイルをよく観察して参考にする。あとはキック直前の駆け引き。フェイントをかけてみたりして自分の間合いに引き込みます」 　この日に向けては相手のPKキッカーのシュートコース、助走の癖などを過去の映像を何度も見返して分析。相手7人目のキッカーのデータはなかったが「自分の間合いに持って行けたし、あとは感覚」と右に飛んではじき飛ばした。主将のDF秋元琉星（4年、J2群馬内定）は「桃（井）ならやってくれると思っていた。さすが」と神セーブ連発に感服していた。 　対戦相手の筑波大は主戦場の関東大学リーグ1部で首位に立つ強豪校。6月の天皇杯2回戦ではJ1FC町田ゼルビアを破るなど実力は大学No・1だが、新潟医療福祉大の選手たちは攻守の切り替え、こぼれ球の反応、そしてチャンスの数で上回った。守備範囲の広さと得意のフィードでも好機をつくった桃井は「ボールを持たれても全員でいい対応ができた。うちのペースで試合ができた」と胸を張った。 　全国大会初優勝まであと1勝。この日、ヒーローとなった守護神は「日本一を取るチャンスはめったにないことだが、力むことなく、今までやってきたことを信じて挑みたいと思います」。ここまでの勝ち上がりは快進撃ではないことを証明し、1番いい色のメダルをかけて新潟に戻る。【小林忠】 　○…前半は右を狙われピンチを迎えたが、後半開始から右サイドバックに入った成瀬護（4年、まもる）が好守で流れを変えた。両サイドでプレー可能な身長180センチの大型DFはハードな守備で来季J1磐田加入内定の筑波大MF角昂志郎（4年）の自由を完全に奪い、仕事をさせなかった。 　6月に北海道旭川市の愛宕中で教育実習をしている間に左DF白石蓮（1年）が台頭。ポジションを奪われた形で今大会はベンチスタートが続くが、ピッチ内外で自分の役割を全うする。「今大会は途中出場勢が試合を動かしている。4年生でベンチは自分だけですが、先頭に立って盛り上げています」。決勝に向けては「笑顔で新潟に戻ります」と初V宣言した。