五輪招致後の“後だしじゃんけん”はアリなのか?
東京都の舛添要一知事が6月10日、突然「五輪の会場計画を見直す」と表明しました。これに驚いた人も少なくなかったようです。マドリードやイスタンブールなどと激しく争った五輪の招致レースは記憶に新しいところですが、他都市を上回る評価を得た計画を、後から変更することは、客観的にみてちょっと「ずるい」のではないか、という印象も受けます。招致決定後に計画を変更しても、問題はないのでしょうか? 今回の計画変更は、舛添都知事が議会定例会の所信表明で明らかにしました。まず、その表明内容をみてみましょう。「招致計画では、東京都は10の競技会場を新たに整備することとしておりますが、これらの施設整備が大会後の東京にどのようなレガシーを残せるのか、広く都民の生活にどのような影響を与えるのか、現実妥当性をもって見定めていく」と、舛添都知事は語ります。つまり、現実的な計画にしていく、ということでしょう。招致活動をしている時は、「勝ちたい」という思いが先立ち、現実から多少離れてしまことは、どの開催都市にもあり得ることかもしれません。 さらに、舛添都知事は「顕在化してきました建設資材や人件費の上昇など、整備コストの高騰への懸念にも対応していかなければなりません」と説明。東日本大震災によって、建設コストが上がることは、想定していなかったのでしょう。こうしたことを理由に、計画の見直しを進めることにしたのです。 この招致時点の計画のことを「立候補ファイル」といいます。立候補ファイルとは、「IOC(国際オリンピック委員会) からの質問状」に対して作成、提出する回答書のこと。これこそ、五輪の詳細な開催計画です。提出期限は、開催都市を決める8か月前の2013年1月7日でした。 そして、その立候補ファイルの中身をみると、14項目にわたります。 順に紹介すると、 (1)ビジョン、レガシー及びコミュニケーション (2)大会の全体的なコンセブト (3)政府及び市民の支援 (4)法的側面 (5)環境 (6)財政 (7)マーケティング (8)競技及び会場 (9)バラリンビック競技大会 (10)選手村 (11)大会の安全、セキュリティ及び医療サービス (12)宿泊施設 (13)輸送 (14)メディア となっています。つまり、競技会場に関するものは、14項目のうち(8)の一つだけです。