坂東玉三郎、10年ぶり「天守物語」富姫役で幻想的な世界観「ヤマトタケル」を見て市川團子との共演を決意
歌舞伎俳優の坂東玉三郎が3日、東京・歌舞伎座で初日を迎えた「十二月大歌舞伎」(26日千秋楽)の第3部「天守物語(てんしゅものがたり)」に出演し、2014年以来、10年ぶりに富姫を演じた。 幻想的な世界が浮かび上がる泉鏡花の名作。白鷺城の天守閣の最上階は、人間たちが近づくことのない、美しい異界の者たちが暮らす別世界で、侍女たちが秋の草釣りをする中、富姫(玉三郎)が登場する。美しく気高い姿は、まさにこの異界の主たる風格が漂う。やがて富姫を姉と慕う亀姫(中村七之助)が血のしたたる生首を手に訪れる。 前半の不思議な世界から一転、後半の姫川図書之助(市川團子)が行方知れずとなった白鷹を探しに天守へやってくると空気が変わる。富姫と図書之助という異界の者と人間との恋が描かれる。特に、富姫が想いをあらわにしていく様子は物語の最大の見どころとなる。初役で図書之助に挑む團子が、富姫を当たり役にする玉三郎に堂々と向き合い、観客を魅了した。 演出も手掛ける玉三郎は「体力的なこともあり富姫を再び演じるつもりはなかったのですが、團子さんの『ヤマトタケル』を拝見し、三幕での手負いになってからの寂しげな風情が良かったので、彼の図書之助でもう一度と思ったのです」。祖父の2代目猿翁も演じた図書之助を演じる團子は「図書之助の純粋できれいな心を表現できるよう、精いっぱい勤めたい」と話している。
報知新聞社