「卑屈な自分に打ち克ちたい」願い込め 高校生が作った黄金のオブジェ
美濃杏佳(ももか)さん(富山・富山中部高校3年)の彫刻作品「遡上(そじょう)」を紹介します。いくつものブロックや「生」「大成」などの文字がらせん状に積み重なったこの作品は、全国高校総合文化祭(清流の国ぎふ総文2024)の美術・工芸部門に出品されました。どのように制作したのか聞きました。(写真・学校提供)
「自分に打ち克ちたい」気持ち込め
― 作品のテーマを教えてください。 壁にぶつかったり周囲と自分を比べたりしたとき、自分がいかに非力で目標に遠く及ばない、取るに足りない存在であるか思い知らされます。そうして卑屈になってしまうことがしばしばあると気づきました。 「そんな自分でもいつかはモヤモヤした感情に打ち克って何者かになれたら」という希望や自分への戒めを込めて、負の感情が昇華する様子を立体的な文字を使って表現しました。 「遡上」という題名は、自らの意思で流れに逆らって現状を打破し、前へ突き進んでいくような力強い印象を持たせたいと思って付けました。 ―こだわったり工夫したりしたポイントはどこですか? 作品全体で一体感が感じられるようにしました。同時に迫力を持たせるため、コントラストとつながりにこだわりました。 らせん状の形にし、色味にグラデーションをかけることで、全体につながりを持たせています。途中にくびれを作り、グラデーションをかけながらも下部は黒色をメインに金色を荒く塗り、上部は金色を丁寧に塗ることにより差別化も図りました。
繊細な作業の連続「神経使った」
―難しかった点、苦労した点はありましたか? ひとつひとつの文字の形を発泡スチロールの板から切り出し、その表面を石塑粘土で薄くコーティングする作業です。地味だけれど集中力が必要なので大変でした。作った文字のパーツと段状になっている土台の接地面はとても少なかったので、針金やボンドなどを駆使して外れないように、かつ見栄えよく設置していくのは繊細な作業で、非常に神経を使いました。 ―制作中、印象に残っているエピソードはありますか? この作品は縦横が約1メートル、高さが約1.6メートルと、今までに作ったことがないとても大きなサイズです。制作途中は全体像がつかみにくいという難しさがありましたが、とても新鮮な気持ちでワクワクしながら作れました。手についた粘土が時間がたって乾燥し、手が石化したような見た目になったこともありました。 ―よい作品を作るためのコツを教えてください。 何をもって「よい作品」とするかはよくわかりませんが、個人的には、少なくとも制作している自分自身が納得できるような作品になるように心がけています。
高校生新聞社