検察「霊能力者になりすまし殺害」と指摘 男性殺害、被告は無罪主張
宮城県柴田町の会社員村上隆一さん(当時54)が昨年4月、自宅で殺害された事件で、殺人などの罪に問われた長男の妻敦子(48)と次男の直哉(25)=ともに同県角田市、無職=の両被告の裁判員裁判が5日、仙台地裁(宮田祥次裁判長)で始まった。 起訴状などによると、敦子被告の指示で直哉被告は昨年4月17日、村上さんの自宅玄関で村上さんの右腰を包丁で刺して殺害したなどとされる。 5日の罪状認否で、敦子被告は「(直哉被告と)共謀していないし、殺していません」と無罪を主張。直哉被告は殺害を認めた一方で、敦子被告との共謀は否認した。 検察側は冒頭陳述で、敦子被告を「全ての事件の首謀」と指摘。パチスロ店で知り合った直哉被告の実母に因縁をつけ、借金を背負わせ、売春を強要するようになったことが事件の発端とした。 直哉被告とは性的関係を持つ一方、その兄と結婚し、2人を自身の配下に取り込み、元夫やその妻とも共謀し、自身が頂点の売春・美人局グループを作ったと指摘した。 だが、直哉被告の実母の元夫である村上さんが、実母が県外に逃げるのを手伝ったと思い、村上さん殺害を決意。「JUN」という名前の霊能力者になりすまし、直哉被告に近づいて心酔させ、村上さんを殺さなければ敦子被告が死ぬという旨のメッセージを送り、殺害を決意させたとした。 一方、弁護側は「JUNと敦子被告は別人」と反論。直哉被告が「JUN」に絶大な信頼を寄せ、言葉通りに殺害を実行したのは、何らかの精神的な疾患がある証左で、責任能力が著しく減退していたと主張した。(阿部育子)
朝日新聞社