【大学野球】早大・小宮山悟監督にとって“父”と言える存在 徳武定之氏の思いを背負って「秋日本一」へ
深い縁で結ばれた2人
2019年1月1日。小宮山悟氏が第20代監督に就任した。2人は深い縁で結ばれていた。 小宮山監督が早大からロッテにドラフト1位で入団した90年、徳武氏は同球団のヘッドコーチだった。また、小宮山氏は岡村監督時代に特別コーチとして、徳武氏の高い指導力を目の当たりにしていた。監督就任のタイミングで小宮山氏が「一緒にやってください」とサポート役を求めると、徳武氏は快諾した。 “息子"からの打診に、断る理由はなかった。徳武氏が早大時代に指導を受けた石井連藏監督は2期(58~63年、88~94年)にわたり早大の指揮官を歴任し、第79代主将だった小宮山監督の恩師にもあたる。そこには、世代を超えた絆がある。徳武氏の同期マネジャーだった黒須睦男氏は小宮山監督の義父という関係もあり、徳武氏は「私にとっては、子どものような存在」と語っていた。 小宮山監督は早慶6連戦の世代に、かわいがられていた。野村氏に対しても「学生野球監督のお手本」として尊敬の念を抱き、ことあるごとに相談してきた。早大の初代監督・飛田穂洲氏の高校(水戸中、のちの水戸一高)、大学の後輩である石井氏から薫陶を受けたという共通点がある。小宮山監督は飛田氏の教え「一球入魂」を、令和の学生に指導している。 徳武氏の熱血指導が、今も目に浮かぶ。打撃ケージの真後ろに立ち、一球ごとに助言。試合に生きる、納得のいくスイングができるまで続く。フリー打撃後も、室内練習場での個別メニューに付き合う徹底ぶりだ。 鳥谷敬(元阪神ほか)、青木宣親(今季までヤクルトでプレー)、中村奨吾(現ロッテ)、重信慎之介(現巨人)、茂木栄五郎(現楽天)らを指導。20年シーズン限りで退任するまで、早大のために汗を流した。
プロ入りする最後の“教え子”
指導現場から離れた後も、稲門倶楽部(早稲田大学野球部OB会)の一員として、後輩たちの面倒を見た。蛭間拓哉(現西武)、そして今年10月24日のドラフト会議で楽天から5位指名を受けた吉納翼(4年・東邦)がプロへ入りする最後の“教え子”である。 昨年11月11日、新チーム発足からしばらくして主将・印出太一(4年・中京大中京)、副将・吉納、学生コーチ・川内脩平(4年・八王子)の3人は、徳武氏に自宅に足を運んだ。 主将・印出は「『早稲田の主将とはこうだ!! 歯を食いしばって頑張れ』と言われました。『圧倒的な結果を残すしかない。黙って、選手を導いていけ!!』と。勉強をさせていただきました」と明かした。2024年は春秋連覇。自身も春は打率.375、秋は打率.360と好リードでもけん引、2季連続でのベストナインを受賞し、大先輩との約束を果たした。