パナに完敗の帝京大。ラグビーの日本選手権は、どうあるべきか?
日本のラグビーシーズンを締めくくる日本選手権の第53回大会が、1月31日、東京の秩父宮ラグビー場で行われ、国内最高峰トップリーグ3連覇中のパナソニックが、大学選手権7連覇中の帝京大を49―15で下した。 この大会では2年ぶりの王者となったパナソニックは、前後半の立ち上がりに魅せた。前半開始直後は、キックオフから笛の音を聞かずに点を取るノーホイッスルトライを2本連続で奪取。ハーフタイム明けも後半10分間で2本のトライを奪った。 21日ぶりのゲームとなった帝京大陣営が「受けに回った」と嘆く傍ら、パナソニックの堀江翔太主将は「ロケットスタートを意識して、臨みました」。学生対社会人のゲームにつきまとう他者からの判官びいきの視線を踏まえ、こう振り返った。 「帝京大の方がチャレンジャーとして気持ちを上げやすい。こちらは言うならばヒールの立場。異常なまでに上げないと、飲み込まれる。簡単なプレーをしないように、と」 堀江の相手守備網の急所をえぐる走り、スタンドオフのベリック・バーンズの相手を目の前に引きつけながらのパス、プロップの稲垣啓太による肉弾戦に絡む選手を引きはがす動き…。パナソニックはかような動作に「簡単なプレーをしない」の意を込め、スコアに繋げていった。 パナソニックは、実力者揃いのチームだ。昨秋のワールドカップイングランド大会への出場選手は7人。かたや帝京大も日本の大学ラグビー界有数の選手層を誇ってはいるが、総キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)はゼロである。少なくとも、高い圧力下での試合経験の差は存在した。 これでパナソニックの組織性に綻びがあれば勝敗が読めなくなるのだが、その組織性こそがパナソニックの強みかもしれなかった。ましてこの日に向けても、「笛も、観客も、相手寄りになるかもしれない。それにとらわれないで、自分たちのラグビーをするんだ、と」と日本代表プロップの稲垣啓太。24日のトップリーグプレーオフを終えると、2日間の休養を経てセッションを重ねる通常通りの準備を重ねた。 結果、ロックのヒーナン ダニエルは前半9分頃のタックルの際、相手ランナーを味方サポートの来る位置へ引きずり倒した。直後、ターンオーバーが決まった。後半22分には敵陣ゴール前で攻めるパナソニックが、ドミネートタックルを食らいながらボールを継続。次のフェーズで稲垣が腰を落としながら相手防御にクラッシュ。そのままインゴールを割った。こうした緊張感のにじむ細やかなプレーを受け、敗れたフッカーの坂手淳史主将はこう語った。 「前に出られるシーンがあった。タックル、ヒットはできていたのですが、簡単に倒れなかったり…。(帝京大のコンタクトの芯を)ずらすうまさというものもありました」 開戦前から噴出必死だった問題点は、大会フォーマットへの是非だろうか。