「慰安婦」再交渉、北朝鮮に融和的……韓国新大統領誕生で日韓関係難しく?
韓国に新しい大統領が誕生しました。革新系最大野党「共に民主党」前代表の文在寅(ムン・ジェイン)氏です。人権派弁護士出身で、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権でも要職を務めた文在寅氏の大統領就任によって、慰安婦問題の日韓合意や北朝鮮政策はどのような影響を受けるのでしょうか。元外交官で東アジア問題に詳しい美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【図表】逮捕に自殺……韓国大統領に繰り返される悲劇は断ち切れるか
徴用工問題にも不満、竹島上陸も
9日に行われた韓国の大統領選挙では、大方の予想通り文在寅「共に民主党」前代表が圧勝しました。新大統領の就任により韓国が一刻も早く正常な状態に復帰することが期待されます。 しかし、新政権には難題が待ち構えています。日韓関係もその一つであり、文在寅政権の下で状況はさらに悪化するのではないかと多くの人が懸念しています。 文在寅氏は、慰安婦問題については、ソウルの日本大使館と釜山の総領事館前の少女像の撤去に消極的な姿勢を取っており、少女像をいったん撤去した釜山市当局を批判したこともありました。また、2015年末の両政府間合意については再交渉を要求していました。文在寅氏の側近には、必ずしも「再交渉」に固執しない、なんらかの「追加的措置」でもよいという見方があるようですが、日本側から見れば「再交渉」とあまり違いはありません。 文在寅氏はいわゆる「徴用工(「強制労働」とも言われる)」の問題や日本の歴史教科書などについても現状に不満であり、日本に対し賠償や書き換えを強く要求すべきだと発言したことがあります。 竹島には2016年7月、上陸して韓国領であることをアピールしました。
要求は受け入れられないが対話は継続を
今後、どうすれば日韓関係を改善できるでしょうか。確かに文在寅氏の主張は日本の立場とあまりにもかけ離れており、関係改善の道筋を描くことは困難ですが、まず、日韓双方とも状況を悪化させないことが肝要です。 これは当然のように聞こえるかもしれませんが、実際には知らず知らずのうちに関係を悪化させることがあります。例えば、日本側では閣僚による靖国神社参拝問題があります。これは本来日本自身の問題ですが、韓国、中国、さらには米国などの反発や批判を招く危険があります。 一方、韓国側でも関係を悪化させない努力が必要です。韓国政府は韓国民に対し日韓関係の重要性を説明すべきだし、対馬(長崎県)の寺から盗取された仏像の返還も説得すべきです。 慰安婦問題については、文在寅氏はいずれ日本に要求を持ち出してくるでしょう。これに対し日本側が要求を受け入れる余地は皆無のように思われますが、韓国側との話し合いを拒絶してはならないと思います。残念ながら、慰安婦問題については当面できる限りの意思疎通を続けていくほかないのかもしれません。 ただ日本は聞き役に回ればよいのではありません。韓国のように政権が代わると政府間の合意も変えたいというのでは、5年後、文在寅政権から次の政権になると、また変わるかもしれない、そのようなことでは日本として対応できないということも主張すべきでしょう。